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B&Wのルポ 前編(side:BLACK)

 

 

B&Wのルポ 前編(side:BLACK)

 

 

第15回目のARTS&CRAFT静岡(以下A&C静岡)は、

全体統一のテーマ『BLACK&WHITE』(以下B&W)を掲げた。

 

B&Wの企画が考案されたのは、1年前に遡る。

 

‘16年の秋季開催に向けて担当スタッフたちが小屋企画を考えていたときのこと。

道具に興味があった一人のスタッフから

「普段から使うモノは、白と黒を持つことが多い」という発想から、

白と黒を集めた企画があがった。

当初はテーマを会場の一部だけに絞ることを考えていたが、

主宰の名倉さんの意向で全体統一のテーマとして広がった。

 

一般部門の参加資格には、

ブースの3分の1をB&Wのコーナーにすることを条件とした。

フード部門は有志のみB&Wに参加することが可能だ。

ここまでテーマに沿った参加の条件を提示したことは初めてであった。

 

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全体統一のテーマはこれで2回目である。

 

1回目は、‘15年春季の開催『green』。

 

開催10回の節目で、

回を重ねるごとに変化と成長を繰り返していくことに改めて意識するとして、

『新緑からときを経て深まる緑になる』として

『green』を全体統一のテーマとした。

しかし、この時の開催を成功したとは言い難い…

とA&C静岡の立ち上げから関わるスタッフの高山さんは話す。

 

「B&Wのテーマが発表され、まだ参加資格を検討しているときに、どのくらいの作品量をB&Wに合わせたらいいんですか?と作家さんから問い合わせがありました。『green』の開催の際にテーマに沿ったものを作ったけれど良い結果がでなかったようで、B&Wに応募することを迷っていると話がありました。」

 

そういった『green』での経験もあり、B&Wは1年間の準備期間を設けることになる。

これまでの小屋企画であれば、担当スタッフ3名ほどで1つの答えを持ち、

企画を進めていたが、全体統一とならば、

スタッフ全員が同じ方向を見て進むことが必要となる。

 

その訓練として、

‘17年春季の小屋企画『春の雑貨店』はスタッフ全員が参加をする形をとった。

スタッフがそれぞれ出展者1人を選出し担当となった。

作品のことや出展者自身のことを知り、

スタッフが自分の言葉で説明をする作業を名倉さんは重視した。

 

スタッフの数だけB&Wの解釈があるのは当然で、その解釈に正解、不正解はない。

それがまたスタッフたちを悩ませることになる。

解釈について頭を悩ませているのは出展者も同じである。

テーマの影響からか、今回の出展申込数はこれまでの数を大幅に下回った。

そういった中で、自分たちの考えに真摯に向き合って応募してくださった方々が、

とても有難かったとスタッフたちは口を揃える。

 

 

開催当日、B&Wの小屋展示は『はじまりの小屋』と題し、会場の入口として鎮座している。

小屋では、スタッフが選出した出展者の作品と紹介文を添えて展示している。

今回小屋の展示などをまとめる中心的な役割となったスタッフの橋本さんは、

『春の雑貨店』からB&Wまでの1年をこう振り返る。

 

「今までの企画って、担当のスタッフたちのこだわりの空間が小屋と企画に詰め込まれていた。これまで、小屋企画に対する熱量や思い入れ、開催時の小屋の中での仕事の把握まで担当スタッフとそうでないスタッフには差があって。けれど、それぞれ小屋に出品してほしい作家さんの担当となって、売上に貢献したい!といった思いを全員が持つことが出来た。これは大きな変化だったなと思います。」

 

 

今年でスタッフ7年目である橋本さんは、

これまでの全ての小屋企画を見てきていて、

自身も何度か小屋企画のスタッフとなり、

理想を実現させる難しさを経験している。

B&Wも同じく思い描いた通りにはいかないこともあったようだ。

スタッフの誰もが頼りにするお姉ちゃんのような存在の橋本さん。

最長スタッフとしてやるべきことがあると話す。

 

「スタッフたちが、選出した作家さんの作品のどこにB&Wを感じたか、伝えたいこと、見せたいこと、それをちゃんと展示の仕方やお客さんたちへの説明で魅せていくことが個人的に達成したいことですね。」

 

 

同じく、小屋の展示販売を担当するスタッフの1人、

青木さんは接客業の経験が長く、

来場者の様子をみながら声かけをし、

会話を楽しんでいる。

 

 

「話し掛けても大丈夫そうな人には作家さんのお話をしています。お客さんのお土産話じゃないけど、買わなくても繋がっていけばいいなと思っていて。逆に、お客さんから、この作家さんは会場にはいないの?他に作品は置いてないの?と聞かれると、通だな!と。お客さんとも話が盛り上がりますね。」

 

青木さんは自身のことを白黒ハッキリつけられない性格だと分析する。

B&Wのテーマを聞いたとき、自分とは一番遠いものだと感じたそうだ。

それでも、このテーマに取り組んだときに

自分の中で何かが変わるかもしれないと思ったが…。

 

「私は変わらず、白黒ハッキリつけられないということがわかった…ということに、白黒ハッキリつきました。笑 作家さんに、白と黒、光と影、どっちが好きですか?と聞いたら、断然黒だね。闇の方が好きだよ、と。私は聞かれたら、どちらかと言えば〜と話し始めるんですよ。ハッキリ言えないなと思って。でも、それが自分なんだなと。」

 

物事に対峙すると、自分のこともより深く知ることになるのだろう。

接客業の経験があるだけでなく、

青木さんの白も黒も受け入れられるような人柄が、

自然と他人の心を開かせるのかもしれない。

終始、柔らかな口調でインタビューに答える青木さんを見ていてそう感じた。

 

 

開催前から楽しかったと話すスタッフの佐藤さんは、

開催の直前までA&C静岡の公式インスタグラムで宣伝を担当していた。

B&Wにまつわる作家さんの投稿をリポストしながら、

人一倍たくさんの作品を見て、

わくわくを加速させていたからだろう。

 

「この目で見たい方がたくさんいました。そう迎えた開催は今回が初めて。時間の都合上、見たい方を厳選して駆け足で周るのが精一杯でした。直接見ることで話すことで伝わることがあり、お客さんとして来たい!そう思いました。」

 

今回の選考会、

申込書の様式は特に変わらないのに、

受けた印象は今までになく新鮮であったそう。

それはB&Wのテーマに作家さんが向き合ってくれたから。

当たり前のようになっていたところに

新しい風が吹いてきたような感じだったと話す。

 

「次いつテーマを設けるかは分からない。会場側は待つだけじゃないということが今回で分かった。それは私の中で発見であり収穫したもののひとつであった。けれど、簡単にできることではない。ただテーマを設けることは我々も出展者もお客さんも誰も楽しめない。自分たちがまずは向き合い、そして過程を大切にする。そうでなければ自分の外へ出すことはできないから。」

 

佐藤さんは開催までの間、

白と黒のものを見るとついB&Wに関連づけてしまうほど、

頭にはいつもB&Wがあり、とても楽しみにしているようだった。

けれど、全体統一のテーマを今後設けることについては、とても慎重な意見であった。

それは、真摯にテーマに向き合ってきた1年があるからこそ話せる言葉であると感じた。

 

 

スタッフの高木さんは、

B&Wについてそれぞれが自分なりの答えを持たなければならなかったが、

スタッフ全員の参加でB&Wが1年かけてA&C静岡らしく育っていったと話す。

 

「A&C静岡を今後続けていくために、いろんなことに挑戦してきたいですね。作家さんの負担になることはあると思うんですけど、共に挑戦していければ嬉しいです。時には緩く、時には今回のように全体を巻き込んで。作家さんが追いてきぼりにならないように、具合を見て挑戦していきたいですね。作家さんとしては、設定したテーマにぶつかってきていただくのも、テーマを設けていない通常の開催のときに応募することもできます。どんなスタンスでも良いと思います。テーマを設けた場だからこそ、映える作家さんもいますし、逆もしかりです。作家さんの良い部分がちゃんと見える場所になると嬉しいですね。」

 

高木さんは、

毎年7月に三島市で開催される『Village』の中心メンバーとしても活動している。

穏やかな口調で語るが、

これからのA&C静岡や、

来年で3回目を迎えるVillage開催に向けて、

沸々とアツいものがあると感じる。

 

「個人的には、スタッフにはもっと手創り市を利用してほしいと思っていて。手創り市がバックにあるから出来ることを挑戦してみてほしいと思います。つまり、スタッフが名倉さんをもっと利用してやろうぜ、ということですね。笑」

 

また、B&Wの準備を経てスタッフがより出展者へ近づくことができたと高木さんは話した。

スタッフと出展者の距離が近いということが、A&C静岡の強みになれば良いと思う。

 

(前編終わり)

 

B&Wルポ後編は11月14日公開。

ぜひともご覧ください!

 

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 2018年春季ARTS&CRAFT静岡手創り市

 開催日:4月7日(土)8日(日)

 申込期間:1月4日〜1月31日事務局必着

 ※小屋企画は”本”をテーマに開催!

 

 

ARTS&CRAFT静岡

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