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会場シュミレーション・ルポタージュ

先日行ったスタッフ全員による会場シュミレーションのルポタージュを、「アトリエ訪問」と「手創り市のルポ」のライターを担当するうえおかさんよりお届けいたします。ご覧ください。


【ARTS&CRAFT静岡手創り市・シュミレーション ルポ】
うえおかゆうじ

9月11日正午前、少し早く護国神社に到着した、名倉くん高山さん東京のスタッフの伊藤くんそして絵描きの清水さんで、早速今回のARTS&CRAFT静岡手創り市で展示をするとある特別な作品の展示シュミレーションに取りかかった。
それは、縦長の長方形の布に描かれた絵、8枚(横幅約105cm、縦幅は3mのものが6枚、2mのものが2枚)を、高さ約4mの位置で、水平に張られたロープに吊るすという大掛かりな作品・インスタレーションだ。
名倉くんは語る。
「清水さんの展示をこの場所に決めたのは、この角度、池と、向こう側の景色−向こうの出島−のふたつを繋ぐ事ができる、ここを一つの画面と捉えて絵を飾っていこうと思って」
清水さんの絵が一旦飾り終えられ、全部の絵が風にゆるやかに揺れながらその姿を見せた瞬間、僕の中である思いが浮かび上がった。
彼女の展示会に足を運ぶ度、毎回清水さんは自分の過去の作品を超える、と僕は感じていて、またしても今回彼女はそれをやってのけたのだと、個人的に感じたのだ。
そんな好感触でスタートした今回のARTS&CRAFT静岡手創り市シュミレーション。それは、正午から始まり、炎天下の中、夕方六時過ぎまで行われた。かなりの長丁場だ。
そんな中、スタッフ一人一人の真剣な眼差し、そして集中力を途切れさせないようにする一人一人の粘りのようなものがありありと見えた、というのがその日の強い印象だ。
今回のARTS&CRAFT静岡手創り市から、前回の様に東京・雑司ヶ谷の手創り市スタッフの応援はなく、静岡在住のスタッフだけで行われる。スタッフは13人。その半数以上が、今回のARTS&CRAFT静岡手創り市から準備に加わった新人メンバーだ。
その事について二回開催を経験しているスタッフに聞いた。
「静岡は年二回しか開催されないから、雑司ヶ谷のようにスタッフ同士が毎月顔を合わせない。それが原因で言いたい事が言えなかったりとか、コミュニケーション不足になる側面もあるのかなと。今回新しい人も一気に増えたので、七月くらいから何もなくても集まろうよ、という声が上がり、一緒にご飯を食べたりしながらしゃべる機会をつくっている。まだ全員揃ったことはないのだけれど、みんな手創り市が好きで集まってるので、回数を重ねれば……と思う」
そんな古株スタッフの心配りを受けた、新人スタッフの一人は言う。
「先輩スタッフさんが、意識的に新人のみんなに話しかけてくれています。どんどん輪が広がるようにと。私も話しかけられて、どうやって次の新しい人に話しかけたらいいのか、それでわかるっていうか。今は次に入って来た人の気持ちがわかるから、積極的に話しかけるようにしています。やってくれたことをやるっていう感じです」
そんな心配りのバトンの受け渡しがスタッフ間で出来ていること。そこにスタッフの優しさを見た気がした。もちろんそれは、人それぞれが持つ個人的な優しさの側面でもあるが、一緒に手創り市をいいものにしていこう、という想いから来るものであることも、同時にひしひしと伝わって来た。
誰かにやれと言われてやらされていることではない。自分がやりたいからやる。その基本姿勢を、ARTS&CRAFT静岡手創り市のスタッフから、当たり前のように感じられたことに好感を持てた。
今回のシュミレーションは、主に、作家さんの搬入時の車の流れを把握するためのものだった。各エリアごとに立ち止まり、そこで名倉くんからの説明が入り、質問を受付、次のエリアに進むという流れだ。この時、名倉くんの説明に、質問を返すスタッフはあまりいなかった。
外から見ている僕はそこにひっかかりを覚えた。どこか、わかっていないことをわかっているという風に片付けている感があったからだ。しかし、同時にこうも思った。エリアごとに受ける説明は、実際シュミレーションを始めてみなければ、実感として掴み辛い情報なのだろうと。それをスタッフみんなが感じているのだろうなという予想である。
実際そのことについて、スタッフに聞いてみた。
やはり、新人スタッフの多くが、「やってみないとわからない」という不安混じりの感触を得ているようだった。そんな静岡スタッフに、東京のスタッフ伊藤くんが、終始、声を掛ける姿が目立った。
伊藤くんは言う。
「一人一人のスタッフに、本当にわかっているのか?わかっていないのか?個人的に確認しながらやっていました。名倉さんの話を聞いて、「わかってる」と答えたスタッフに「本当にわかってるの?」と問い掛け、わかっていないスタッフから「わかっていない」という正直な言葉が貰えるようにと」
もちろん、わからないスタッフのフォローに入ったのは、伊藤くんだけはない。今のエリアから次のエリアに進む際、必ずと行っていい程、3、4つに分かれた新人グループに古株のスタッフがそれぞれ入り、新人スタッフをフォローするという場面が見えた。僕はこの場面を実に好意的に思った。
高山さんは言う、
「新しいスタッフの中に古いスタッフが自然と入って行く。ここは会社組織じゃないから。会社組織だと縦割りがあったりするんで、私は関係ないとかいう人もいるし。静岡手創り市はフラットな関係。みんなで協力して、手創り市をなんとかしようという連帯感がある」
ある古株スタッフも言う。
「二回目まで東京のスタッフに手伝ってもらっていた。今回静岡のスタッフだけでやるのが初めてで、正直わからないことが多い。そういう面で不安もあるが、一回二回とやってきてちゃんと続いているから、もちろん未知の部分はあるけど、だんだん良い物になって来ている実感はある。やってダメだったところを二回目、三回目で変えていける」
僕は聞いた。
今まで開催した中で、どんな問題点があり、またそれをどうやって克服して来たかと。
古株のスタッフが答えた。
「難航したのは前回雨が降った時のエリア5ですね。地面がぐちゃぐちゃになってしまって、お客さんが来なかった。メインエリアの参道は砂利敷きだから歩きやすかったし、人も出ていた。その時あった地図も一周ぐるりと巡るように歩く市なのに、一周出来なそうに見える地図だったのがいけなかった。雨が降っても開催はするのだから、今回からそうなっても見て貰える会場づくり、エリア5に清水さんの絵を展示する、フードエリアの配置を変えて流れを良くする、エリア5と他のエリアを結ぶ為の看板を置く等して改善策を練った」
古株のスタッフらしい、明確な回答だった。
一方、新人スタッフたちにも、現時点で何か壁はないか? とも問い掛けてみたが、準備への参加期間が短い関係上、まだ壁という壁を意識できるほどのことはしていないし、壁と感じるものは今の時点ではない、という意見が多数だった。そう言った意味では、参加期間の短いまま開催に突入すること自体、壁となるだろうし、今回のシュミレーションがそのスタッフたちの最初の壁に成り得るのでは?と僕は感じた。
そして実際、車を使った、搬入のシュミレーションがスタートした。
新人スタッフの声を拾うと、
「以前、この場所を勤めていた先輩スタッフさんが、やり方を伝授してくれたので、助かりました」
という声や、
「自分の持ち場に自信がない。話聞いている時は不安だったんですけど、今やってみて動きがわかって、トランシーバーも使ってるから、ちょっと安心した。やはり、実際やってみないと」
という声、そして、
「選考会が一回目の参加で、今日やっと具体的にやることが見えて来た。メールや資料等で、なんとなくしか護国神社の会場の位置を理解してなかったけど、ここで何をすべきなのかが明確になってきた。そこで思うのは、やはり搬入搬出が大変そうだということ。ここで時間が押すと、のちのちに影響も出るし」という声などが上がった。
そして、前回一度参加したスタッフからは、こんな声が拾えた。
「一回目は車の流れがわからなかったのですけど、今回は名倉さんの言っている意味がわかるようになった。自分で車を運転しないので駐車してもらうにしても誘導とかが、しどろもどろな感じになってしまうのが問題点。スタッフになる前の予想として、運営するスタッフは当日や準備が大変なんだろうなというのはあった。そして前回雨が降って、その大変さは味わったことがなかったので、天候によってこんなに大変なんだ、と実感できた。降ったら降ったで楽しいかもしれないですけど、できれば降らないで欲しい」
更に、古株スタッフのこんなセリフが印象的だった。
「当日、作家さんが順序良く来る訳がない。場数を踏むしかない。こちらに構わず、もしかしたらどんどん通り過ぎる方もいるかもしれないし……。お客さんにしても、駐車場ありません、と言ってもなかなか納得してくれない。こればかりは、当日になってみないとわからない」
その通りだと僕も思った。作家さんやお客さん、そのすべてが、こちらの思い通りに動いてくれるはずなどあり得ない、と。
名倉くんはそれを想定した意地悪問題的なシュミレーションを、念には念を押し、何回も行った。そのシュミレーションの重ね方は、実際的で良いなと僕も思った。しかし、シュミレーションはあくまでシュミレーション。限界があるのも確かだ。名倉くんはその限界を理解しつつ、できるだけのことをやったのだと僕には感じられた。
そんな名倉くんを信頼するスタッフの声も、今回多く拾うことが出来た。
「みんな言いたいことは言うけど、最終的にまとめられるのは名倉さんの力だと思う。名倉さんの中で道がはっきりしているのがわかるから。そういう面で、なんとなくこうしたいんだなということがわかるから、それについていこうと思える」
僕自身も名倉くんとの付き合いは長い。それはプライベートだけでなく、手創り市の仕事や以前行なっていたイベントなども含めてだ。その際、イベントをまとめる立場にある名倉くんの姿勢は、対話に「正解」を求めるのではなく、それぞれの個人的、主体的な意見をまず聞くというものにあった。
名倉くんと付き合い出すまで、僕はどちらかというと、「Yesマン」だった。もちろんなんでもかんでも「Yes」と言っていた訳ではないが、どこか自分が輪の中からはみ出すことを無意識に恐れ、みんなに同調する習性のようなものが根付いていたように思う。
しかし、名倉くんと関わるイベントで出会った皆や、名倉くんの主体性ある姿勢などに触れ、僕自身、まずどうしたらみんなの意見に合わせられるのか?と考える習性がだんだんとだが薄まっていったのだ。
その想いを、長年つくり手と企画者としての名倉くんと付き合いのある、絵描きの清水さんの台詞が体現していると思えた。
「今回の展示、最初は名倉さんのイメージに気を取られていて、どういう風にしたらいいか? 名倉さんのイメージに近付けるか? と考えている節があった。しかし、名倉さんの思いの前に自分の意見を言わないと、と思った。私はこうしたいって、自分なりに考え直しはっきり言ってみた。その時のことは印象に残っていて、今日、あの時私はこうしたい、と言えてよかったと思えた。それは絶対自分がいうべきだったって。それはとても大事なこと」
自分の足で立つ事で、真に相手との協力関係が築ける。互いの違いを認め、受け入れ合い、切磋琢磨しながらも歩み寄る。そんなことを再確認させてくれる言葉だった。
清水さんのその言葉を受けた時、自分もそうありたいし、静岡のスタッフにもそんな協力関係をさらに築いていって欲しいと思えた。それが、ひとつの物ごとを築き上げる確実な土台となると思うから。
一日のシュミレーションを終え、インタビューした名倉くんの台詞にもその軸となるスタンスが見える。
「開催当日、何かあった時にはどんどん言った方がいいよ、いわない人は損するよ。言わない人と何もしない人は一緒だと思うから。それは僕のスタンスだから。だから逆に何を言われてもなんとも思わない。意見の違いもなんとも思わないし、現場で感じた事なんだからそっちを優先した方がいいこともある。そこにちゃんと在る人の意見を取り入れた方がいいから。僕らがいる場所はとにかく現場、そして僕らの現場は言い訳ができない結果の現場でよくて、だからこそスタッフ全体ですべての事を噛みしめて共有できる現場だと思う。」
まだ開催三回目の静岡手創り市。雨天決行という設定も含め、当日本当に何が起こるかはフタを開けてみなければわからない。そのことはすべてのスタッフが意識していることだと思う。
僕は思う。
確かに現段階では想像できないことも、当日たくさん起こるだろう。しかし、その対応に取り組むことによって、市を支える底力は確実にあがっていくと。
今回記事に掲載できなかったが、僕はすべてのスタッフにインタビューをさせて頂いた。みんなに共通して言えることは、手創り市が好きで、手創り市をいいものにしたいという、その真剣な姿勢が強く感じられるということだ。
その熱意を静岡手創り市の継続に繋げて欲しい、というのが僕の思いだ。きっと静岡のスタッフになら良いものがつくれる。つくり続けていける。そう感じさせてくれる魅力が一人一人に宿っていたと思うから。
ARTS&CRAFT静岡手創り市。僕も楽しみにしています。 
・・・・・

先日の会場シュミレーションではスタッフではない物書きのうえおかさんに会場に来てもらい、スタッフとは違った人間の視点を通してのシュミレーションのルポタージュをお願いしました。
このルポはスタッフ内というよりARTS&CRAFT静岡にとって内部文書(大袈裟ですが・・・)のようなものであるけれども、私たちスタッフの第1回目から今に至るまでの経過(結果)を知ってもらえるチャンスであると思ったので誰もが読む事が出来る形をとったルポタージュとしました。
やることによっての成果ではなく今をありのまま知って頂く事は私たちスタッフ全員で出来る事であり、それが人とむきあう術のひとつであると思うのです。
お付き合い頂きありがとうございました。

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ARTS&CRAFT静岡
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