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第2回ポートレイト・ルポ



*前回のポートレイト・ルポは「こちら」をご覧ください*



第二回ポートレイト・ルポ 2012年9月17日


前日から撮影時の雨が心配された、PORTRAIT展の撮影会。午前中に静岡入りした僕は、降ったり止んだりを繰り返す気紛れな空模様に気を揉んでいました。

しかし、午後一時を過ぎた辺りから快晴に変わり、そして二時、雨上がりの護国神社にみなさんが集まりました。


集まったカメラマンの大野さん、作家さん、スタッフが、挨拶を交わしながらめいめいに今日の天気の事を話題にしているのが印象的でした。



開催までもう一ヶ月を切ったARTS&CRAFT静岡。「PORTRAIT」とは、ARTS&CRAFT静岡に出展する作家さんと、その作家さんがつくった作品、もしくは愛用の道具を一緒に撮影した写真展です。


大野さん名倉くんは早速、境内の茂みに入り、そこで撮影のチェックを始めます。

そして最初に撮影する作家さんがスタンバイ。

その時間を見て、撮影待ちの作家さんにインタビューをします。


最初にインタビューしたのは、御夫婦で成形と絵付けをなさる焼き物作家「2020製陶所」さんです。

このインタビューは、一歳になったばかりの娘さんを奥さんの佳恵さんが抱きかかえながらのものとなりました。

かわいい娘さんの眼差しを受けつつのインタビューです。



まず、自己紹介をお願いします。


俊之さん(以下・俊):「2020製陶所の原村といいます。やきものをつくってます」


陶芸家と言わず、焼き物というのは何か理由があるのですか?


俊:「語呂がしっくり来ないというか、偉そうな感じというか。陶芸家というより陶芸作家とか、作家とか、そういう感じの方がしっくり来ますね」


等身大な感じがするという事ですかね?


俊:「はい。でもそんなにごだわりは持ってないですね」


今回撮影用に持ち寄って頂いた道具を紹介して頂きたいのですけど。


俊:「牛(ギュウ)ベラって呼んでいるものなんですど。ヘラですね」


牛の舌?


俊:「多分牛タン。牛の舌の様な形をしているから牛ベラっていうのだと思うんですけど。轆轤をひいて土を上に伸ばす時に、このヘラで一番底の部分を押さえて、挟んで引き上げる。小さい物をひく時には使わないですけど、大きい物をひく時に使う事がある道具です。何か面白いかなぁーと思ってこれを選びました」


これはどこで入手されたんですか?


俊:「佐賀の有田の窯業学校に行ってた時に、授業で必要だから買うんですけど、職人さんが一つ一つ作ってるから、大きさとか長さとかもバラバラで。ズラーってあって、その中から「選んで」とか言われて選んだ物です」


その時、直感で選ばれたんですか?


俊:「そうですね。その頃は何もわからないから、先生の言う事を聞きつつ、直感ですね。で、結構このヘラをつくるのも大変みたいですね」


これをつくるのは木工作家さんとか職人さんとか?


俊:「これを専門につくってる職人さんだと思いますね。でもそれだけじゃ生計立てられないと思うから、多分兼業しててこういう物もつくる様な人なんだと思います」


何年くらい使われているんですか?


俊:「学校に行き始めた頃だから、2007年から。5年位ですかね。使ったり使わなかったりするんですが」


そもそも焼き物を始めようと思ったきっかけは何だったんですか?


俊:「もともと大学の時に写真をやってて、大学卒業してからも撮り続けてたんですね。で、写真撮りながら博物館でバイトをしていて、上野の国立博物館だから結構焼物がいっぱいあって。平安から江戸時代、そのくらいの時期の物が。それらの物を見ているうちに、傾いていったっていうのと。写真撮りながら色々と旅してて、陶芸家の記念館とか、そういった所を見てるうちに傾いていきました」


実際、焼き物作家になられてどうですか?


俊:「大変な事もありますけど、でも自分に合ってるっていうか、良かったと思いますね」


その「自分に合ってる」というのはどの辺が一番マッチしてる部分ですか?


俊:「なんにしろつくるのが好き。細かい作業したりとか、自分でつくったりとか。多分僕は木工とかも好きでやれると思うんですよ。たまたま傾いたものがやきものだったという感じなんですけど。とにかくつくるのが好きだらか、合っていると思います」


次はこちらの道具ですね。


佳恵さん(以下・佳)「私は絵付け、染付を担当しているので、筆を持って来ました。主に使うのがこの四種類なので、それぞれ役割が違くって、線を描く用の物とか、面塗り、「濃み(だみ)」っていうんですど、その濃み用の筆とか一本一本役割が違うんですよ。特にこの一番太いやつが、実際に出すのが先っぽのこの細さ、太いのは太く描くのではなく、たっぷり絵の具を含ませて一息で描く為に太いのであって、太い線を出す為じゃないんです。これがなかなか慣れるまでは扱うのが難しいのですけど、一番この「濃み」って作業が私は大好きで、愛用している筆です」


絵はいつ頃から描かれているのですか?


佳:「同じ、2007年から佐賀に行ってからなんですけど。私は職業訓練校で絵付けを専門で習って、その後、伝統工芸師さんにも習ったんですけど」


伝統工芸師さんの元での修行はどういったものでしたか?


佳:「すごい優しい先生で、伝統工芸師っていうと名前がすごいですけど、ホント、一から親切に教えて頂きました。この筆もその時から使ってるのもあるんですけど、あまり一本の筆を使い込んでしまうとクセが付いちゃうというか」


クセが付く?


佳:「この筆がダメになった時に、新しい筆に急に変えると描けなくなってしまうとか、段々自分に慣らしていくって作業が必要なので、敢えて同じ種類の筆も4、5本は持つ様にしていて。いつどの筆がダメになっても自分の手とか使い方にフィットした筆が使える様に、何本かをローテーションして使っています」


ARTS&CRAFT静岡に出る事になったきっかけを教えてください。


俊:「僕らが出展していたのは、都内。都内といっても限られた範囲でしか出展してなかったので、遠征というか、遠い所でも出展してみようかなって」


佳:「他の地域の人にも見て貰えたらという想いもあって」


俊:「みんな初めてみたいな所に出してみたいなっていうのがあって」


佳:「一回目っていうのも魅力だったし、あとフライヤーの山口さんの絵を見て、すごい魅力的な雰囲気が始まる前から感じられるなっていうのも魅かれた理由です」


出展されてみてどうでしたか?


俊:「反応はすごく良かったです。特に一回目が。多分静岡で今迄あったのかわからないけど、こういうイベントがもしかしたら初めてに近かったのかな? 多分そういうのもあって、反応は良かった」


佳:「お客さんも喜んで、「毎月やればいいのに!」とか言ってる方もいらっしゃったりして。一回目はブースの大きさが広かったので、当日行く前、どうディスプレイするかでもめたりとか(笑)こっそりディスプレイの物を持っていって、当日、じゃーんって見せたりとか、そういうのも思い出深いです」


最後に10月開催に向けての意気込みをお願いします。


俊:「まぁ、気楽にいきます。力まずに。自然体で」


佳:「今迄や、前回とかもなんですけど、毎回私達のブースに寄ってくださるお客さんがいて、前回買った器を「追加で買いたいんです」という声とかも結構頂いたりして、そういう常連さん達にも、また目新しい作品を見て貰えたり。後は初めて来場した方のためにも、私達の特徴が良く表れているような定番品とかも合わせて並べていきたいなと思います。追い込みでいっぱいつくらないと」


追い込み大変そうですか?


佳:「そうですね。でも楽しくね♪楽しくね♪」

俊:「在庫がちょっと……」

佳:「頑張ります!」



次にインタビューを行なったのは、紙モノの作家「muni」さん。こちらも御夫婦で活動されています。


まずは自己紹介をお願いします。


「二年前に静岡の東部の方で『muni』という名前で紙モノを制作し始めました。私達のつくる紙モノの素材は印刷物をつくる過程で切り落とされる端材や、紙がずっと使われなくなっちゃって使えなくなった状態のもの・廃材になる紙を素材にして、紙モノの作成をしています」


端材や廃材を使う事に着目した経緯を聞かせてください。


「僕は印刷会社に勤めてまして、入社した頃から捨てられる紙を見てまして、その中から、「あ、ここがいいな」っていう所があって、そこを切り取ってポストカードとかを自分で収集してたんですね。で、自分、手紙を書くのがすごく好きで、それを集めていったっていうのがきっかけで、大分貯まってきて、そういうのに興味がある人に「どうかな?」とか聞いたりしていて。そういう紙好きの方がクラフト市とかに出展してみたらどうか? って言ってくれて。ポストカードからぽち袋とか、カレンダーとか本当に生活に使われる紙物を夫婦でつくり始めたというのが経緯になりますね」


奥さんとの作業の分担はどうなっているんですかね?


「リアルに言うと、お互い良いものをつくろうとすると反発し合っちゃう所があって、なのでなるべくレターセットならレターセットで、当然お互い話し合うんですけど、八割、九割は「これやりたい」って言った人がラッピング迄決めるっていうスタンスにしてます。で、ちょっとだけアドバイスっていう位に」


撮影用に持ち寄った作品の事を教えてください。


「タグを持ち寄りました。タグは、毎日捨てられる紙の中から、色んな紙と色を切り取る所で出る、顔が違う所の面白さ。捨てられちゃう所を敢えて、世の中に出すって所で、その面白さをみなさんに知って貰えたらなって事でこのタグの作品を選びました」


ちなみにこれは今、どの位の数あるんですかね?(縦約60センチ、横約1メートル、深さ3センチ位であろう木の棚に、小さなタグが六段に分かれて横並びに並んでいる)


「約150位です。細かく言うと、軽く1000はストックしています。その一割位を下げて持って来ました」


これはだいたい一点ものを目指しているんですか?


「一点ものをなるべく目指してるんですけど。同じ紙と色なんですけど、また切り取る所で形も変わって来るんで、そこを一つとして色んな形を取れるように色々場所を変えて切り取ってます。触った時に感じ方も違うっていうのもありますし、そこも楽しんで貰いたいので丸裸で作品にしてあって、触った感じも楽しんで欲しいなっていうのもあって、こういう形にディスプレイしています」


ARTS&CRAFT静岡に出ようと思ったきっかけを教えてください。


「自分は静岡に住んでいるので、静岡の地元でそういうクラフトフェアがあるっていうのは、すごく嬉しいというか。物づくりをやっていく上で、色んな作家さんも出る中で、地元の人も活性じゃないですけど、力にちょっとでもなれば、というのと。あと静岡って製紙会社も多かったりするんで、紙っていうのを改めて再認識出来る場になったらなっていうのもあって。静岡でも結構クラフト市も増えてる中で、今回五回目なんですけど、一回目からスタッフさんを始めお客さんにも見て貰って、段々お客さんにも知って貰って、そういう物をつくってるっていう事を知って貰うという事も、ホントに毎回、回を重ねる毎に強く感じてまして。それを毎年毎年、年を重ねる毎に、もっと作品を通して、紙じゃなくても、普段、これ捨てなくても使えそうだなっていう物も再利用して、使っていくって意識を変えていって貰うきっかけとなったらなと思っていて、そのきっかけづくりもコンセプトの中には強くあります」


そのコンセプトをお持ちの中で、お客さんとのコミュニケーションにおいて大切にしている部分って何ですかね? 対話の手法でもいいですし。例えば、先程言っていた事をお客さん全員に伝えたいと思うのか? とか。


「一人一人全員に説明したい所なんですけど、なかなかそのタイミングもわからないですし、普段別に販売員とかもしてないんで、なかなか慣れてないというのもあるんですけど。その代わりにこういうディスプレイとか、そういう所にも細かく意識をして、作品を通して話すきっかけをつくる、という事を考えながらやっています。このタグなんかは、まず子供が「お母さんこれ何?」って所から、で、その説明書きとかをお父さんお母さんに見て貰って、子供に伝えるなり、さらに私と、親子さんと話すきっかけになればと思いますね。つくる時に、出展した時にどういう光景が頭に浮かぶかを考えながら、つくってはいますので」


それはすごく大切な事ですよね?


「出展した時に、その光景が起きた瞬間、よし!って思いますね」


最後に10月開催に向けての意気込みを。


「今回僕ら五回目なんですけど、なかなか手創り市の中でも紙モノって多くないと思うんです。携帯電話で打つメールの便利さと、やっぱし、気持ちが入った手紙、紙モノもやっぱりいいなって思える様なブースづくりと作品づくり、お客さんとの対話で再認識して貰えたらなっていうのを強く思いますね」



最後にインタビューしたのは自家焙煎珈琲豆の「鳥仙珈琲」さん。こちらも御夫婦で活動されています。


まずは自己紹介をお願いします。


「静岡市で自家焙煎の豆の販売をしています、鳥仙珈琲の田中です」


撮影に持ち寄った道具について聞かせてください。



「色々迷ったんですけど、『ふるい』を持って来ました。珈琲豆の方がわかりやすいかと思ったんですけど。ふるいを使うのは、豆を煎る前に色んな世界からお豆が来るんですけど、それをまずこのふるいにかけて、色んなゴミだとか、石コロだとか、そういうのを取って、きれいに選別してから煎るので、一番スタートラインというか、まず来たものに手を加える、ふるいをかけるって作業なので、このふるいにしました。やっぱり国によって管理が色々で、コンクリートの破片とかが入ってたり、トウモロコシが入ってたり、誰かの髪の毛が入ってたり、そういうのをそのまま煎ってしまって、混入してしまうと、機械のミルを壊してしまったり、口に入る物なので、煎ってからだとわからないんですよ、焦げちゃうんで」


そういった意味ではものすごい集中力を使う作業ですね。


「そうですね。珈琲屋始めてから目が悪くなっちゃって。一日豆を見てる感じで、煎る前の検品の時間が手間が掛かる。煎る時間は15分とか20分なんで、それが終ったら販売するっていう。全部粉にしてしまって、大量に売る大手のやり方とは違うし、一粒一粒ちゃんとしたものでないと。1杯のためにお豆を挽いてやる方も多いので、そのひと掬いの中で一粒って結構重要になってくるじゃないですか? その一粒の中に何か違うものがあるってすごい確率なので。粉にしちゃえばわからなくなるものなので。パン屋さんとか手間が掛かるじゃないですか? 行程ですよね。発酵させたり。豆屋さんって基本豆を煎るだけなので、行程があんまりない中で、少ない行程のひとつひとつが重要になってくる。そういう感じはしますね」


鳥仙珈琲さんはオープンしてから今年で何年目になりますか? また何故珈琲に携わるお店を始めたのですか?


「今年の10月で丸2年。色々な仕事をやって来て今豆屋なんですけど、やっぱり一番は珈琲が好きであるという、当たり前な答えになっちゃうんですけど。珈琲の中でカフェをやる、豆をやるって色々な方法があると思うんですけど、色々な仕事をして来た中で、自分がこれからずっと歳を取るまで、一生出来る仕事を考えた時にカフェではなく豆を煎る方だった。それが自分に一番合ってたので」


自分の性に合うって事ですよね?


「性に合うって感じるには、まだ日が浅いんですけど、二年やってみて、続けれるなという。始めたはいいけどやっぱりダメだったってあるじゃないですか? そんな中ではこの仕事は、自分に合っているというか。あとやらせて貰えてるんで、まぁ、食べていけるという所になってるので、良かったと思っています」



ARTS&CRAFT静岡に出ようと思ったきっかけを教えてください。


「丁度二年前の10月なんで、お店がオープンする頃だったんですよね。たまたま名倉さんにお店にお客さんで来て頂いて、その時にお話しを。自分達も出れたらという気持ちもありましたし、たまたまそういうタイミングでお声を掛けて頂いたので、それがきっかけです。一回目、初めてだったので状況もわからないし、お店も立ち上げたばかりだし、何もわからない状態で自分達の考えるお店づくりをしてやったんですけど、やっぱり色々な問題が起こって。お湯が全然足りないとか」


「お客様をすごく待たせてしまったりとか」


「1杯1杯点てる事にこだわってやったので、基本、結局待つじゃないですか? ピーク時で30分待ちになってしまったんですね。たかだか珈琲1杯の為に。だから手創り市という所で1杯ずつ丁寧にやっているので、それを理解してくれる方もいらっしゃいましたし、逆に珈琲1杯なのになんでこんなに待つのか? それはやってる自分達も、自分が客だったらそんなに待てないだろうし「そんな手間掛けないでいいから出してよ」って感じになるだろうと思ったし。反省・改善点も多かったです」


では最後に10月開催への意気込みを。


「一応今回で五回目の出展になるので、久し振りに会う作家さんだとか、手創り市の時に来て下さる方も増えて来たので、ホント変わらず丁寧な仕事をしたいと思っています」



すべての作家さんの撮影、インタビューが終ったすぐ後、天気雨がパラパラと降り出しました。雨が降ったのが撮影中ではなかった事を良かったと思いつつ、大野さん、作家さんを送り出したスタッフや僕は、次に、名倉くんの先導で、PORTRAIT展が当日展示される場所に。

そこで当日の展示の仕方、写真を置く為の机の位置などを説明、皆と確認し合いました。

この確認作業も、実際展示をする場所に行ってみて、そこで自分のイメージと当日の展示風景・尺等を照らし合わせ、その場で確認・修正しながら他スタッフと意見を交換し合うという内容でした。


その後、静岡市内にある額縁屋に行き、額縁に対する情報を収集。

さらにQUATRE EPICE(キャトルエピス)さんへお邪魔し、お茶をしながらのミーティングへと流れ込みました。

そこで名倉くん、スタッフの泉谷さんが当日の展示の仕方、額縁等についてディスカッション。たまたまお邪魔したQUATRE EPICEさんの、面が斜めに傾斜した黒板にヒントを得たのか? 額縁は泉谷さんの手づくりによる斜め掛けの板になりそうです。

そういった一連の流れ、周りにアンテナを張り、それを自分達なりのアイデアに変えてしまうところに、手創り市のスタッフらしさを個人的に感じました。


当日、果たして「PORTRAIT」はどの様に展示されるのか?

写真ももちろんそうですが、展示の仕方も込みで楽しみになって来ました。


これで、第二回ポートレイト・ルポを終ります。

ここまで読んで頂き本当にありがとうございました。


うえおかゆうじ


※「PORTRAIT」展は10月13・14日のARTS&CRAFT静岡会場、

 エリア4とエリア5の間の参道にて行われます。


ARTS&CRAFT静岡

shizuoka@tezukuriichi.com








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