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2013年秋季ARTS&CRAFT静岡ルポ:前編(10月12日)


2013年秋季ARTS&CRAFT静岡ルポ:前編(10月12日)



何故、物をつくるのか? と問われることがある。

僕の場合は「何故書くのか?」と。

僕はこう答える。

書き続けることを選んでいるのは、自分が楽だからだ、と。

書いている時は、人生の座り心地が良い。すっぽりと何かにハマるように、僕は僕の人生にハマることが出来る。

逆に書いていないと人生の座り心地が悪い。

僕は、書けない時期を何年も経て、今こうして書ける生活を送ることが出来るようになった。

時折、書けない時もあり、それは何よりも苦しいけれど、やはり、書くことを選択し続ける限り、僕は人生を楽に感じられる。

「楽」。楽しいという感情にもそれは当てはまる。

書いている時ほどエキサイティングな瞬間ない、と僕は思う。

そういったものを見つけられただけでも、僕は幸せだと思う。


僕はルポを通して、手創り市の作家さんに、

「つくることの動機や喜びを教えてください」

という質問を何度も投げ掛けた。

そして多くの作家さんに共通して返って来る言葉、それは、「つくることが好きだから」「楽しいから」というものも多いが、最も多く返って来た言葉が、「お客さんに喜んで貰えることが嬉しいから」という言葉だ。

自分の作品が、お客さんの日常に入っていき、お客さんの生活の喜びの一部に変わること。

「お客さんが喜んでくれる瞬間のためにつくり続けるのだと思う」、という言葉も伺った。


自分の作品が他者とつながることで得られる喜び。

それは「書くことが楽しい」で止まっている僕より、ひとつ先にある答えのようにも思えた。

僕は、この手創り市でルポライターを始める前に、何人かの友人にこんな言葉を貰った。

ちょうどアトリエ訪問のライターとして、インタビューのテープ起こしや編集後記を書いている頃だった。


「うえおかさんの編集後記は、個人で書いている小説とはちょっと違って、等身大の言葉で書いているよね? それがいいと思う」


その頃から僕は「等身大の言葉」を意識するようになった。

独りよがりだった僕が、他者とのつながりをより求めるために選んだ姿勢、それが「等身大」。


手創り市の作家さんの多くは、自然とそれを体現していると、今回のルポでも思った。


好きなことを生業にするということは、自分が自分らしくいられる場所や時間を持つことと、イコールだと思う。

そして作品の向こうに、「お客さん」という「社会」があり、そのつながりを大切に物をつくり続けること。

そんな、作家さんたちが集まるARTS&CRAFT静岡で、今回も僕はルポを行った。



開催前日の夜中、雨音を聞いた。パラパラと音を立て、窓に当たる雨だった。

翌朝、6時半過ぎに会場入りすると、夜中の雨で地面が湿っていた。僕は思った。今日は砂埃が立たないだろうから水撒きの心配もないだろうと。そんな風に、天候を通じて会場のことを自然に考えるようになっている自分がいた。

手創り市にライターとして関わり始めてもう4年。&SCENEのスタッフとしては丸一年。そんな時間が僕に与えた変化なのだろう。


蒸し暑い朝だったが、地面には落ち葉が目立った。気温は25度を超えているだろう。夏を混同させたような秋だ。


作家さんが搬入している参道に入っていくと、声を大きく上げて他のスタッフとコミュニケーションを取っている橋本さんが目に付く。彼女の声の先には高山さん。彼も大声でそれに返す。橋本さん、高山さんは誰よりも声が出ていると思った。


名倉くんのお父さんに託されたスタッフ全員分のサンドイッチを僕は持っていた。それを見た顔見知りの作家さんが、

「いっぱいありますね! お腹いっぱいになりそう!」

と、大きな声を立てて笑った。手創り市に関わるようになったことで、こんな風に作家さんの知り合いも増えた。


八時過ぎ、だいたいのブースが出来上がり、受付が始まる。受付の横にある、「むすぶ」のフライヤー置き場で、スタッフの川手さんを見つける。川手さんは今回、私用で本開催のスタッフを休むことになり、悔しがっていたが、時間の許す限り会場に顔を出したいという思いらしい。

「お仕事ですか?」

と声を掛けると、

「遊んでいるだけです」

と微笑み、富士山や、温泉のマークなどがスタンプされた重しの石を、フライヤーの上に丁寧に乗せていた。


僕は再び、開催前の参道を歩く。

テントの屋根を外しているブースが今回より目に付く。これは、二日間の晴れを約束したかのような天気予報の効果と、開催前にブログで再び取り上げられた「テントについて」の記事の効果だろうか?と感じた。


池に囲まれたフードブースの集中するエリア、出島(とスタッフに呼ばれていた)にて、今回、画家の清水美紅さんが開催の二日間をかけ、ライブペインティングを行う。前日準備にも参加していた清水さんは、その日こんなことを言っていた。


「絵を描く前は落ち込む。全くゼロからそれを始めるから。

 描き上げることは絶対わかっているけれど」


名倉くん、高山さんが脚立を持ってそこにやって来た。そして名倉くんが強引に一本の木によじ登ると、高さ、3、4メートルあたりにロープをくくりつけた。まるで野生児といったそのたくましさや、同時に木から落ちることを怖がるその様にそこにいた一同が笑い、パチパチと写真を冷かしで撮ったりしていた。

そして、木と木の間を渡したロープに、幅3メートル、高さ2.3ートルの布が付けられ、清水さんの舞台とも呼べるキャンバスが出来上がった。



9:00スタート。お客さんはまばらだ。しかし、無事スタートを迎えられた作家さんたちの表情が、どこかゆるんでいるのを感じる。

そんな中僕は、sometaeさんという手拭い作家さんの作品に見入っていた。

僕の手拭いのイメージは、家紋などの一定のデザインが、手拭いという面の上でループするように配置されているもの、というのがあった。しかし、その時見たsometaeさんの手拭いは違った。

それは一枚の絵だった。昔見た切り絵の絵本のようなスタイルを持った、群像劇だった。

一枚の絵の中に、たくさんの人々が描き込まれている。泣いている人も笑っている人もいる。涙を流しながら珈琲を飲む人。一輪車に乗った少女。子供を抱く母親。ハシゴを支える子供たち。懐中電灯を照らす兄妹……。

僕は、sometaeさんにインタビューの承諾をその場で得、お話しを伺った。


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「デザインを先に考えることもあるんですけど、図案が思い浮かばない時には、直接感覚で図柄を切っていくんです。そんな風に、自分の中にあるものが自然と浮き上がるように、切りながら考えることも多い」


昔からそのやり方をしていたのですか?


「違いますね」


何故、そのやり方にシフトしたのですか?


「かっちりした物より、ゆったりした物が好きだから、ですかね?」


彼女は言う。自然と出るもの、そこから連鎖してつながっていくもの。そういったつくり方も自分に合っていると。自分の性格も神経質ではなく、きっちりとはしていないという。なるほど。そのスタイルから生まれる余白や余裕から、sometaeさんの無意識的な部分が浮き上がった深みのある作品にそれは見える。


そんなsometaeさんは、独立を2、3年後に考えているという。


「独立にかける覚悟がないと。このままやっていても成長しない。もともとガツガツいく方ではないので、ガツガツ染める機会を増やせたらと思います。自分の心の持ちようですかね?」


sometaeさんは自身のコンセプトをこう語る。 


「暮らしに根付いた物づくりをしたい。飾って貰うより使って貰いたい。暮らしの中でふと色だったり柄だったりみて気持ちよくなって貰えたらと。最近、洗面所を開けた時に、自分の手拭いの色がパッと目に入って、ああ頑張ろうと思える瞬間があった。自分の作品で、上手く色の出た物は好きです」


sometaeさんもやはり、誰かとのつながりの中に自身の作品の意義や喜びを見出してた。


「自分の柄を面白がってもらえると嬉しいとか、そういったことがつくる動機ですね」

 

まず、自分の作品を好きだと思える瞬間があり、その好きを誰かと共有できること望む。純粋な動機だと思った。



時間は10時を過ぎていた。活気のあるブースの前には人だかりの出来ているところもあった。

そんな時僕は、会場に新しい景色を見つける。

それは、正面の鳥居前に縦に走るエリア1〜5を、横に逸れるエリア6の風景だ。

毎回この道からの景色は、人がやや少なく、そしてどこか空間が間延びした感じに見えていた。しかし、今日は違った。そこには、道の両脇にあるブースの間にたくさんの人が詰まっている感じがあった。

スタッフの間でも、毎回このエリアをどう見せるか?人をこのエリアにどう誘導するのか?ということが話し合われている様だった。今回はブースをジグザグに、そして道の前面に出る様に配置を凝らした様だ。そのアイディアが見事形になっていると思った。



エリア6、フードエリアを抜け、境内を回り、次に僕は寄木細工の作家さん

OTA MOKKOさんにお話しを伺った。


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OTA MOKKOさんは、いつも家族で各会場の手創り市に参加してくれていた。

このARTS&CRAFT静岡の良さを聞くと、


「広くてのびのびしていてゆっくりしていますね。木漏れ日の下という、シチュエーションも好きな点のひとつです」

「そして、家族でいても窮屈な思いをしなくてもすむ」


家族、特に奥さんとの役割分担のようなものがあれば、と僕は聞いた。ご主人が応える。


「僕がひたすらつくる。で、一人で出来ない作業を手助けして貰うこともある。工房兼お店をやっていて、店長は妻。責任分担をしないと。どっちもなーなーではいけない」

 

ひとつの家族としてご主人を支えるOTA MOKKOさん家族。そこに対する思いを聞いた。OTA MOKKOさんは言う。


「家族を巻き込んでやろう、と思って始めました。絶対手助けが必要になるんで。そして計画通り進んでます(笑)」


もともとは施工関係の仕事をしていたOTA MOKKOさん。手仕事が好きというのがあり、転職を考え、職業訓練校に通い、そこから小田原の伝統工芸、寄木細工の道に入ったという。


「そう言うとカッコいいストーリーみたいに聞こえますけど、寄木細工の仕事を始められたのは、ハローワークのおかげなんです。たまたま求人が出ていて、そこから、というレアなケース。普通は、職人さんに弟子入りを申し入れて、何度も断られたりしながらようやく始められるかどうか、という感じなんですけど」


そこにはどの位の期間いたのですか?


「8年」


その期間は長かったですか?短かったですか?


「長かった。最初、2、3年で独立してやろうくらいに考えてたんですけど。この世界は、10年で一人前と言われていて。50代でも若手なんです」


そんなOTA MOKKOさんに親方さんから学んだことや口酸っぱく言われたことなどを聞いた。


「仕事は早く、丁寧に。これは良く言われましたが、そんなに口で言う方でもなかったので。あとは、常に新しい物をつくる。伝統的な技術を使いつつ、新しい物をつくっていくこと。寄木細工はお土産品というイメージがあるので。宝石箱とか、ペン立てとか、決まった物がある。そこを脱出するのが大変で。僕、ボタンをつくったのが初めてなんですけど、全く新しい物をつくりたいですね」


今、つくってみたい物は?


「寄木の家具。大きな家具ですね。昔はあって、それを海外に輸出していて。またそれをコレクターが逆輸入するというパターンがありますね」


物をつくる動機や喜びはどこから来ますか?


「もちろん、食べてく為(笑)喜びは、つくって、買ってくれた時も嬉しいんですけど、また僕のところに来て買ってくれる、ファンになってくれると嬉しいですね。ボタンを買っていって、洋服に付けてくれていた時とか」


物づくりにおいて気を使っているポイントなどあれば?


「色合いですね。つくった物を常に新しい感覚で見て貰いたいので色合いを工夫をしています」


一点物ということですか?


「そうですね。逆に前作と全く同じ色合いの物を、と言われると困るのですけど(笑)」


物づくりで、やる気がでない時もありますか?


「二日酔い、夫婦喧嘩(笑)迷い、自信がなくなるときってありますよね?このままの方向性でいいのかって?」


そこから抜け出すのはどんな時ですか?


「時間が解決してくれる。か、手を動かす」


すかさず、簡単な言葉でそう言ったOTA MOKKOさん。その口調に、OTA MOKKOさんの、つくり手としての経験値を見た気がした。次に僕はOTA MOKKOさんに将来の夢を聞いた。


「一生使って貰える物、受け継がれていく物をつくりたい」


代々ってことですよね? 木の性質を考えつつ?


「劣化はもちろん木の性質として考えつつ、味を重ねながら、愛される物をつくりたいです」


何か言い足りないことがあれば?


「僕は2、3年で独立してやろうと思っていたけど、下積みの時代って大切なんだってことを今に思います。物づくりってポンって出来るものではないので」


この言葉には僕自身戒めを感じつつ、僕はOTA MOKKOさんのブースを後にした。


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12時前、出島の清水美紅さんの絵を観に行くと、その白い布の左上に、ひとりの少女が現れていた。少女は、跳んでいるのか? または跳ぼうという瞬間なのか? その線に力がこもっているのを僕は感じた。

絵の前には三脚に立てられた一眼レフカメラがある。手創り市写真部の布田さんがコマ取りの撮影を仕掛けつつ、自身も別のカメラでその足を使い、アングルを変え、絵を取り続けているのが目に入った。



清水さんのライブペインティングを後に、次に僕は、夫婦で来てくださっているお客さんにお話しを伺った。


「ここに来るのは四回目、友人が出展している。イタリアンレストラン、サレペペさんの普段からの常連客です」

「普段はパスタを食べに行っています。毎日でも行けるような優しい味。この市ではお惣菜を買いました」


ブースを見て回っての感想は?


「賑やかしいにもなるし、頑張れよ、という気持ちにもなる。あと、グッとくる品物との出会いがいい」

「木のランプを買いました」

 

ナカオランプさんですね?


「そう、色合いがいいでしょう?」


「今日、歩いていて思ったのは、このイベントは、天候に左右されるのだろうなということ。一年前、来た時は寒かったので、一日は居られないだろうなと思った」


最後に要望などあれば?


「新しい、面白い物、ユニークな物を選考ではなく、優先で入れて欲しい。もっともっと、変わった物が見たいです」


&SCENEの選考会では、申込書の写真がいまひとつだとしても、実際ブースに出て貰ってどんな展開を見せてくれるのか?という部分に期待して、新しい作家さんや、今までにないジャンルの作家さんを積極的に取り上げる場面もある。申込書の写真という物は選考に大きな影響を与えるが、僕らが見ているのはそこだけではない。



午後二時を回った。が、境内はたくさんのお客さんで賑わっていた。

「この時間を過ぎてもお客さんが引けないのは、このイベントが定着してきた証拠かな」

そう語るスタッフの橋本さんに、今回は、ARTS&CRAFT静岡独自の企画、正面鳥居前の小屋をギャラリーに見立て展開した「MY CUP is ...」の話を中心に伺った。


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「春におやつ企画(まちきれない!おやつセット)が先行しているので、そこにつながるような企画で、カップ。カップは、コーヒーカップに限らず色々な種類がある。買ったカップには、ドリンク50円オフのタグが付いていて連動していける。そして、この企画と連動する飲み物を珈琲にしたのは、ATRS&CRAFT静岡で特化している飲み物が珈琲だから」


この企画のコンセプトは、お客さんと作家さんをつなげる、というものだと言う。これは以前からスタッフたちがやりたいと思っていたコンセプトだ。


「さらに、スタッフもつなげたかった。壁にスタッフのカップを写真でデーンと貼ったりとか。統一感を出すのが難しそうだけど、そういうことまで、バタバタで手が回らなかった」


橋本さんは、今回初めて「MY CUP is ...」を通じて「企画」というものに関わった。


「スタッフが企画をやるって今までなかった。小屋で企画をやるのは、初。段取り、ばたばただったけど、ここまでは楽しかった。企画者全員、違う仕事、同じ場所に住んでいる訳ではないので、ずっと同じ関わり方が出来る訳じゃないけど、それぞれが今できることをやって、調整しつつ形になった。思ってたよりお客さんも入って、カップも売れて、どのくらいの売り上げかっていうのは、平均がある訳じゃないからわからないけど、成り立つところまで持っていけた。不特定多数のお客さんがいて、商売をしてる作家さんがいて、それなりに最低限のことを求められる。そこはどうにかクリア出来たかなと」


今回の企画の反省点は?


「展示方法、作家さんへの連絡とか、詰めれてない。段取り、下準備、もっと出来てたかもね。しようがないといえば、それまでだけど、しょうがないで終わらせたら意味がないなじゃないですか? もうちょっと出来たかもしれないな?」


しょうがないで終わらせたら意味がない。橋本さんらしい前向きな言葉だ。そこに彼女や、今回の企画ののびしろを感じた。


今回の企画から、本格的に「企画する側」に回るスタッフも増えたATRS&CRAFT静岡。そんな中で、スタッフ全体を見渡す意見を橋本さんに求めた。


「最初の世代、川ちゃん、万記ちゃん、私ぐらいまではまとめようとする。そのあとの世代のスタッフは、聞き役か、自己主張タイプ、と言うと言い方悪く聞こえちゃうかもしれないけど、みんなそれぞれの個性があってそれを全面に出せる人と、役割を与えたらそこでバーンと力を出せる人とがいる。仕事の都合で打ち合わせに来れない人たちって、自分が今更何が出来るか? って一歩引いた所から見ちゃう子たちもいるし。それって、みんなが本職な訳じゃない、それはそれで間違いじゃないし、名倉さんと同じ力の注ぎ方って出来ないから、それは当然でいいんだけど。言うことを言う子たちと、聞く子たちとそれだけじゃダメなんだよね。言うだけじゃ、荷物置いてった状態になるし、それを聞いてる、見てるだけじゃ、その荷物ちらかったまんまだから。それを一カ所にまとめて、いるいらないの選別を出来る人が必要だけど、レギュラーでいるメンバーでそれが出来るのって、川ちゃんと私なのかな?って。みんなそれぞれ言うけど、最後の押し、「こうしよう!」が言えない。で、結局名倉さんが決める。それじゃやっぱりダメじゃない? 最終決定権は名倉さんかもしれないけど、せっかくやっている以上、言いたいじゃんね。やっている以上。それぞれ言っていいのかな? やっていいのかなって。じゃなく、とりあえず、言ってみて考えればいいんじゃないかな? その考えをまとめる人が出てくればいいんじゃないかな? それは名倉さんが育ててくださいね、とは言ってるのだけど。みんな出来ない訳じゃないと思うし。ただやり方をしらないだけ」


それは今回、率先して橋本さんが「MY CUP is ...」の企画に関わろうとしたことと同じ意味だと僕は告げた。やるか、やらないか、そこに立つか、立たないか、だと。


「全員が何かやらなきゃならないとは思わないけど。自分の生活犠牲にしてまで、とは思わないし、せっかくいるのだから楽しまなきゃね。やりたいからやる。やりたいことやれるかもしれるんだから、とりあえず言ってみよう。自分が実行出来なくても、その意見が反映さえたら、それって多分誰だって嬉しいと思うんだよね。一歩前へ、って感じだね。みんな」



次に話しを伺ったのは、2011年秋からスタッフとして入った阿井さんだ。

今回阿井さんは、「まちきれない!おやつセット」の企画にも関わっている。


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「私が主にしたのは、作家さんへのご案内メールのやり取り。作家さんとやり取りするのは初めてで。送るのに緊張しました(笑)でも、作家さんみなさん乗り気で、こちらが提案したものに乗ってくれると楽しいなと思いました」


阿井さんはもともと、何か物をつくっていたのですか?


「美術系の大学にいました。デザイン科。広告とか商業的な作品を主に」


デザインの醍醐味って、何だと思われますか?


「何かがあって、欲求されて、それに応える。需要がないと成り立たないというのもある。

自分がどう応えるか? 答えがひとつではないところが面白い!」


そのデザインの腕をATRS&CRAFT静岡内で活かしたいと思いますか?


「今やっている仕事とのバランスが取れれば……。バランスが取れないとどっち付かずにもなってしまうし。それは嫌なので。でも、やれる環境にあればやりたいですね。時間が、と言っていてはいけないのですけど」


そんな阿井さんに、今後、スタッフとしてどうありたいかを聞いた。


「お客さんと作家さんが手創り市でつながる、それがスタッフの楽しみ。だから、デザインで、つくってる人を支える、つくる自分でもありたい。そこがかみ合えばいいと思いますけどね。スタッフとしても普通に楽しいけど、今まで自分がやって来たものが重なるような」


橋本さんの言葉にもあったように、阿井さんにもまた、一歩前へ出たいという欲求があるように思えた。スタッフはみな、それぞれの仕事や事情を抱えている。その中で出来ることを模索しているのが、阿井さんからも伺えた。個人がそれぞれの特徴、特性を活かし、それが全体として回っていく様になるには何が必要だろうか?

&SCENEの場合は、募集の始めから「企画をやりたいと思っている人」という条件があった。現に、&SCENEでは、それぞれがそれぞれの特性を活かし、ワークショップやライブ企画に主体的に関わりを見せている。もちろん、企画を出し、それを実行していくのはそう簡単なことではない。話し合いの上で、アイディアがすかさず却下されることもまれにある。そんな時は単純に凹みもするが、でも、みなの中心には&SCENEを良くしていこう、という意志が通っているからこそなのだと思う。そこに厳しさがあって当然なのかもしれないな、とも思う。



次に話しを伺ったのは、女性二人組のお客さんだ。


「はじめて来ました。ネットでたまたまこのイベントを見つけて」

「お金が足りなかったです。今度は10万くらい持って来ようと言っていて(笑)」


たくさん買い物していますね!


「真鍮のネックレス、指輪、ハーブティー、あとは飲んだり食べたりして」


作家さんと話しますか? 


「また来ますか?って作家さんに聞いたら、選考が通れば来ますって(笑)」


「真鍮を自分でつくってみたいので、作家さんにつくり方を聞いていました」


何か要望などあれば?


「飲み物がもっと欲しかった」

「マップを見ても、現在位置、どの方向かはわからなかった」


他には?


「半年にいっぺんじゃなくて、四季それぞれにいっぺんやって欲しい」


お二人は普段から手づくりの物は買ったりしているのですか?


「はい」


その魅力は?


「人と被らない」

「欲しい物を買うという感覚ではなく、実は無意識で欲しかった物を買う。インスピレーションですかね」



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最後に話しを伺ったのは、フードエリアで梅干しを販売しているうめぼしの松本農園さんだ。


ずっーとお客さんが切れなかったですね?


「珍しいことをしてるなって、寄ってくれたのかな?」


梅干しっていう物を色々なパッケージの仕方で売っていくって面白いですよね?


「そうですね。試食、食べ比べ、味を見て買ってくれるんで、それが珍しいのじゃないですかね?」


梅をつくる時、木と話すということをですが?


「梅は正直と言いますか、木の状態がすぐ枝や葉に出るというか、目が離せない。僕もまだまだ全部話しを聞ける訳じゃないんですけど。殆ど毎年、色んな気象条件も違うし、土の状態も常々変わっていくんで、梅とか果樹の木になると、一回失敗してしまうと、20年、30年、取り返しのつかないことになってしまうので。代々受け継いで来た物を大切に育てています」


常に木と話しつつ、慎重にですね。あと、梅干しは昔ながらの天日干しということですが?


「ビニールハウスなど効率優先のものには、良いところもあるけれど、悪いところもあって。本当の天日干しじゃない。品質や、味が少しずつ失われているというのがあるので。だから、昔に戻って、天日干しをしています」


100年以上続く家業だと聞いてますが、松本さん自身、それを継ぐことに抵抗はなかったのですか?


「都会にも憧れた次期もあって、コンピューターの勉強しに行ったりもしたんですけど、親父が情熱的な人なのでその背中見ていたら、やはり梅だと思い、戻って来ました(笑)」


周りの農家の方たちとはどんなつながりというか、関わり方をしているのですか?


「今まで通りじゃダメだな、という意識の人たちがたくさんいて。やる気のある人たちばかり集まる場っていいですね。そんな時、刺激になります」


「僕たちもつくってるだけで卸は基本、任せていたので、こういうイベントに出て、目の前で試食して美味しいっていって頂けるとそれは本当に嬉しいですよね」


最後に、要望などあれば?


「搬入時間がもう一時間遅く出来たら……。遠方から来てるものですから。といっても難しとは思うのですが」


何か言い足りないことがあれば。


「手作り市というものは、本来昔からあったもので、それが一回衰退して、それがもう一度戻ってきた。それは僕ら農家と同じなんです。今、再び、無農薬、有機、自然のものが農家に求められているのかなと」


思わぬところから、松本農園さんとARTS&CRAFT静岡の共通項を見た気がした。松本農園さんのいう、「手づくり市はもともとあったもの」という言葉に、僕は、冷めたコミュニケーションではなく、人と人の熱のあるコミュニケーションが通う場所を想った。

手創り市の醍醐味に、お客さんと作家さんとの対話があげられる。作品という作家さんの分身のような物を通じて、語り合い、つながる。その感覚が僕にはとても貴重なものに思えるのだ。

それが松本農園さんのいう「もう一度戻ってきた」という感覚でもあると思うのだ。



うえおかゆうじ


(2013年秋季ARTS&CRAFT静岡ルポ:後編(10月13日)につづく) 







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