RSS1.0 | Atom0.3



2014年くらしのこと市・開催ルポ【前編】


2014年・くらしのこと市ルポ【前編】


今年で三回目を迎える「くらしのこと市(以下・くらこと)」。

第一回目はお客さんとして。第二回目はルポライターとして。

そして今回は「お客さんの目線からみたライティングを」という依頼を受け、

昨年に引き続きくらことにお邪魔することに。



当日は快晴。ここ、足久保にある木藝舎・SATOの緑も陽射しに栄え、

作家さんたちの作品も、陽射しを浴び、いつもとは違う色合いを見せてくれる。


10時スタートのこのイベント。

すでに開催20分前には駐車場に約30台もの車が停まっていた。

スタート前からお客さんが会場を歩く景色を眺めつつ、僕もお客さんの一人として、

会場を回る。


くらことは、130を越すブースが出展するARTS&CRAFT静岡手創り市と違い、

ブースの数は21。

その分、自然と作家さんとのコミュニケーションは、挨拶から会話、会話から

対話へと密に発展しやすいと思った。



ブースが近い作家さんたち同士も、どこか親しげに見える。

それは前夜祭の影響も多々あるだろうし、やはり、この締まった会場が生む

一体感のようなものがそうさせるのかもしれない。



11時からはくらしのことカフェがオープン。

限定50食とあったので、11時前にはカフェの前に行ったのだが、

すでにもう10組程の列が出来ていた。

カフェのスタッフさんに予約をし、指定された数十分後に戻ってみると、

「相席で良ければ通せる」という展開になり、僕は、4人連れのご家族席に

お邪魔することになった。


普段、相席という機会はなかなかないが、今回の経験はとても心地よい思い出となった。


互いが互いを知りたいと思い、多少の気遣いを混ぜつつ、会話を展開していく。

その中の表情、選んだ言葉、場の空気、それらがつくり出す時間を共有し、

互いの中に、ポジティブな種類の印象や様々な感情を見つけていく。

これは当たり前のことだけど、普段のくらしの中でもとても有意義な時間であり、

体験であるように僕は思う。


今回はたまたま初対面だったというのもあり、互いに好奇心を抱きやすかったのかもしれない。

しかし、初対面の人だけでなく、普段面識のある様々な人たちとも、こういった

熱のある対話はいつでも交わせるはず、とつくづく思う。

一期一会といっては大袈裟かもしれないが、互いに、丁寧に対話することで、

そんな時間はいくらでも生み出すことが出来ると、このご家族との対話を通じて

つくづく再認識することが出来た。



ご家族が僕より先に『秋のオープンサンド』を食べ始めていた。

食材を味わうたびに、顔が上気するのがわかる。僕もそれに続く。

山のような盛り付けは、不器用な僕には食べづらかったが、ご家族同様、

僕もその味に上気した。


「前回来た時は、ランチセットが最後の一食だったんです。それを主人と半分にして食べました。そのことがあったので、今回はランチ目当てに、朝早くから会場に来たんです。きっとこのランチセットを目当てに来ているお客さんはたくさんいると思います」


お客さんというのは、大概が自分本位なものだ。

今回僕は「お客さん目線でルポして欲しい」という依頼を受けたので、

ここで気になったことをいくつか。


50食限定という点は、様々な都合で決まったことだとは思うが、やはり、

会場内にランチが出来ないお客さんがたくさんいたように見えたので、

その数は単純に少ないと感じた。ならば、50食限定にあぶれたお客さんの、

お腹と心を満たすような仕組みが必要となってくるはずと、前回に続き、今回も思った。


50食限定というのはくらしのこと市側の潔さであり、誠意であると思う反面、

当日の集客数を予想し、それに見合った料理やカフェの在り方を考えたであろうか?

というのも気になった。


ちなみに、ランチセットのメニューは、まず、オープンサンドが2種類。

パンは、このSATOにて普段パン屋を営む、『サトパン』さんのカンパーニュ。

ひとつはきのことクリームチーズのディップに、ゴボウの素揚げで、

秋の山をイメージしたとか。

もうひとつは、バジルペーストに菜花、ドライトマト、アボカドで、足久保の緑と

夕陽をイメージしているとのこと。

デニッシュは、サトパンさん作。ナッツで秋らしさを感じて欲しい、とのこと。

スープは白菜の豆乳スープ。季節は秋から冬へ。澄んだ空気が感じられたら…と、

カフェスタッフの川手さんがその料理の意図を教えてくれた。



次にお話を伺ったのは、木藝舎Satoの八木さん(以下、八)だ。



八「何より嬉しいのはね、また今年もこのイベントをやれる時期が来て、予定通り準備が出来て、開催が出来たこと。手創り市さんたちは、当たり前のようにやれそうでやれないことをやっているでしょう?そこに感心します」


植「それは、手創り市側も同じ気持ちなのかもしれませんね。木藝舎さんは、手創り市がやれないことを当たり前のようにやっている。そこにある互いの尊重が、信頼を生んでいる部分もあるのかな?と。」


そんな話をしていると、取材をしている僕らの足元で小さな子供が転び泣き出した。

僕と八木さんはそんな子供を見ながら、



植「あそこに木が置いてあるじゃないですか?子供ってああいう木を自然におもちゃにしちゃう。木が置いてあるだけでも、それは遊びに変わっていく。SATOのそういう環境がいいなっていつも思います。ツリーハウスがあったり、砂山があったりも含め。」


八「小さいお子さんからお爺ちゃんお婆ちゃんまで、たくさんの人がここに来てくれるでしょう。楽しんでいって欲しいと本当に思います」


植「今日『 r o o m s 』としてギャラリースペースになった作業所は、もともと、どんなスペースなんですか?」


八「四月くらいまで、家具工場でした。でも下の方に工場もあるんで、仮の工場でしたけど。これからは『サトパン』のパンだけでなく、カフェスタイルでお野菜やスープも出そうと思っているんです。その離れにしようかなと。感性のある人たちにアイディアを出して頂きながら、空間を上手に使って頂けたら嬉しいですね」


植「『 r o o m s 』はいかがでしたか?」


八「教会を思わせるような神秘さ、神聖さを感じました。名倉さんにお祈りすることはないと思いますけど(笑)」



その後、僕も『 r o o m s 』に足を運んだ。

八木さんのいう『神聖』の意味が少しわかるような気がしたのは、

その作業場を使ったギャラリーに射し込む光、その光が生み出す影や、

闇が溜まる場所などが、見事に作品と調和し、それを引き立てていたという点においてだ。

作品の並べられ方にも、一定の大枠としてのパターンがあるようで心地良く、

実は様々な意図が働いているようでもあり、静かでいて一点を刺す様な刺激もある。

しかし、惜しい!と思わせる一面もある。

それは、各作家さんの作品の前置かれたキャプションだ。

その小さなキャプションには、作家さんの作品の写真と名前が印刷されているのだが……。

この『 r o o m s 』の空間をここまでのものに仕上げたなら、

この中にあるキャプションまで、展示空間をつくった時と同じ熱量でつくって欲しかった、

というのが正直な感想だ。

同じ作業所の隣には、古本が様々なレイアウトで置かれているスペースもある。

それも含めてこの静寂とした空間は、とても美しいと思っただけに、

そのキャプションが僕の印象に残った。



次にお話しを伺ったのは、

そんな『 r o o m s 』の前にブースをだす陶器の作家、町田裕也(以下、町)さんだ。

町田さんは茨城県の笠間の窯元で三年間修業した後、地元埼玉の実家に戻り、

その数年後となる、去年の二月から独立を果たしたのだという。



植「独立には勇気が要ったのではないですか?」


町「勇気よりも不安が大きくて。でもタイミングもチャンスもそうそう来るもんじゃない。その不安以上の気持ちでやるって思って、踏ん切りました。それまでの六年間は、会社に勤めたりしながら、毎日「見切りをつける」ことばかり考えていました。その反動ですね」


植「独立してみて、感じていることは?」


町「良いことと悪いことがはっきりする。守られてないからですね。企業や給料日とかいうものに。どういう風にみせて売るか?そのひとつとっても、良くも悪くも結果で現れる。什器ひとつとってもですね。そんな中、大切にしていることは、頭の中にあるものをその手でダイレクトに形にすること。目に見えるものに起こす。形にしないとわからない。くらことや、他の市は、何か統一したものを見せるというよりも、形にしてみて、作ったものを見て貰う。一方、ギャラリーに作品を出す場合は統一。絞り込みます」


植「くらことに参加してみての感想を。」


町「出展者が少ない分、お客さんとの距離感が近いことが印象的です」


それは僕も同感だった。そして実際、今回初対面の町田さんとは、

会場内で何度もばったり会い、お互いに「お疲れ様です」と言い合っていたのだが、

4回目、5回目ともなると、そのばったりが面白くて、笑いながら「お疲れ様です」

と言い合う、ある種のネタのようなものになっていたのだった。

その時の町田さんのとぼけた笑顔は今でも印象深い。

そんな風に作家さんのユーモアに一日で近付けたのも、出展者数の少ない分、

密に関わることの出来る、このくらことならではかもしれないと思った。


そんな町田さんの器は、荒々しい自然を模したような器もあれば、

シンプルな単色の器もあったりと表現の幅が広いように感じた。


将来的にやっていきたいことはありますか?と最後に僕が聞くと、


町「5年経っても、10年経っても、つくるものに幅のあるこのスタイルを崩したくない、というのがその想いです」


と、クリアに答えてくれたのだった。



次にお話しを伺ったのは、現在、埼玉の秩父に拠点を置く

木工作家のうだまさしさん(以下、う)だ。

うださんはもう、かれこれ10数年、木に関わる仕事に携わっているという。



植「うださんにとって、木の魅力はどこにあるんですか?それこそ語り尽くせないほどあるとは思うんですけど。」


う「触ってて気持ちがいいっていうのが一番ですよね。あと、自分がつくりたい造形が、一番表現しやすい。土でもなく、ガラスでもなく、木が僕に合う素材だったっていう」


植「それに気付いていった時っていつ頃なんですか?」


う「過去にテレビの大道具の仕事をやっていたんですけど、その時には気付いていなかったと思うんですよ。あの現場って、つくっては壊してだったんで。で、その次に家具工房で働いて……家具だから、使ってくれる人が目の前にいる。あぁ、この人が使ってくれるんだって思った時に、あぁ、木が好きなんだなって気付いたんだと思います」


植「なるほど。」


う「あとはだんだん好きになっていったっていうのがありますよね。それこそ語り尽くせないほど魅力がありますから。もっとどんどん知っていくと、色んな表情を見せるんで、もっと好きになってくるって感じですよね」


植「知っていくと表情を見せるようになっていくって深いですよね?」


う「知った気でやっていた頃もあったけど、今の方がその頃よりも知っていることが増えてきたっていうのもあるし、まだ多分知らないこともあるし、色んな表現方法もあるから、それを見るのが楽しみっていうのと、冒険とかもありますし」


植「くらことに出てみてどうですか?」


う「『 r o o m s 』も面白かったですね。これは他の作家さんたちも気付いていると思うんですけど、お客さんって、ここで買った物を家に持ち帰った時に「なんか違う」って思ったりすることがあるんですよ。でもそれって、合わない訳じゃなくて、気持ちの問題というか」


植「ここでの記憶が強かった。」


う「そうですね。『 r o o m s 』のように、ああいった切り離された場所に作品があると、それが削ぎ落とされて見れると思います。だから、ああいう場所はいいと思います。お客さんにとってああいう方を求めてる人も多いと思います」


植「うださんもブース・ディスプレイにはすごく気を使われてますよね?そのポイントは?」


う「目で愛でるというか。見て楽しい感覚を大切にしています。お客さんに楽しんで欲しい」


植「今、「楽しい」ということばが出ましたが、うださん自身、つくることは……。」


う「結構楽しいですね!なんだかんだつくっちゃいますよね(笑)」


植「うださんは、くらしの中につくることが組み込まれていますが、それは幸せことだと思いますか?」


う「いやー幸せですよね。これでくらしていけたら幸せですけど、押さえるところは押さえておかないと大変なことになりますしね。自分勝手になり過ぎない。ただつくればいいっていうのもあるけど、俯瞰している自分もいないと散らばっちゃいますよね?」


植「そんなくらしの中で気を使ってる部分は?」


う「ゆとりですね。ゆとりがあると、ご飯をつくろうと思えるし、美味しい物をつくろう、コーディネートしようと思える。何でもやろうという気になるんですよ。それを持たせるためにどう動くかっていう毎日ですね」


植「自分のくらしのリズムをコントロールしてるんでしょうね?」


う「それをずっと意識してるからそこ上手くなったのだと思います」



ゆとりを保つためにくらしのリズムをコントロールする。

それは本当に大切なことだと、僕も日頃から強く感じている。

しかし、僕の場合、それをコントロールするどころか、日々の様々な刺激に右往左往し、

そこから生まれる衝動のままくらしている、といった日々が習慣化していたなと、

最近の自分のくらしを再認識したのだった。

このままでは、うださんの言うように、散在して何も残せずに時間が過ぎていくだけだと。

だからこそ、このタイミングで、うださんのクリアな思考に出会えたことが嬉しかった。



*後編につづく*



【くらしのこと市とは?】

静岡市内山中の足久保にある木藝舎Satoにて開催の
暮らしに寄りそううつわを中心とした市。

日々の食卓を彩るうつわのつくり手が集い、

使い手と繋がることで、今よりも少しだけ良い毎日が交差する。

うつわのつくり手を中心に、暮らしを彩る道具、

素材にこだわった食品を提供するお店も参加を致します。


※くらしのこと市へのお問い合わせは下記メールまでお気軽にどうぞ。

facebook : https://www.facebook.com/shizuokatezukuriichi  







Profile
New Entries
Archives
Category