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【 ル ポ 】考える g r e e n 〜つくること〜 後編 (スタッフ高木)



 * 考える g r e e n 〜つくること〜 前編 *



初めてのことはいくつになっても緊張するものだ。


ここは埼玉県の某所。

僕たちは約束の場所でバスを降りた。

そして、ほんの少しの時間の後、辻さんがバス停まで車で迎えにきてくれた。

僕たちは車に乗り込み、辻さんの工房へと向かった。


しばらくぶりの辻さんはあいも変わらず、ハキハキしており、好奇心の塊のような方だ。

猫背で舌ったらずな僕とはまるっきり対照的。

そんな辻さんは、生活で使う器を中心とし、花器などを製作されている。



「いつもの器というのが理想です。”いつも使っているやつ、それ取って” みたいな。」


そう語る辻さんの作品は「シンプル」

たどり着いた「シンプル」

いつもの器というコンセプトにヤスリをかけ続け、最後に残ったもの。


形はくっきりとしていて、「削ぎ落とす」という言葉がピシャリとはまる。

色は、白、黒、グレーがメインで、料理をのせることで「色」を持つ器。

そんな姿が、僕はたまらなく好きである。



さて、車に乗って、5分ほどたっただろうか。

辻さんの工房にたどり着き、辻さんの旦那さんが出迎えてくれた。

いつも手創り市にきていただいていて、非常に社交的な方。

まったく僕が見習いたいくらいである。

僕たちは案内されるがまま荷物を置き、少し休憩したあと、工房内の見学へ向かった。



ここは、辻さんの作品の原点。

土練機があり、轆轤があり、作業机があり、水道があり、窯がある。

辻さんは、考え、悩み、ここで作品を生み出している。


器は料理をもるための道具であり、そこに料理があって初めて成立するもの、

と辻さんはいう。


時代とともに料理の内容、家族の形態は変わっていく。

その中でも、いつもの器を目指して。


― 隅々まで納得した作品を作る

― 提供する作品のばらつきを減らす


そのためにプロセスを考え、不必要なものを削ぎ落とし続ける。

作品に触る手数を考え、挽いた器の断面を切って中まで美しくできているかを突き詰め。

丹念に、自分の理想の器を追っていく。


コンセプトを創り、プロセスを構築し、理想とする作品の範囲におさめていく。

そのプロセスには様々な苦労があり、こだわりがある。

これは、どの世界でも通用するものづくりの過程。

僕たちの手に取る作品の裏側で見えないもの。

でも、そのように創ることに執着したからこそ、生まれた作品たち。


そして、その作品たちを手にとって観てほしいから、展示方法にも頭を悩ませる。

いつもの器を目指しているからこそ、やはりまずは手に持ってもらいたい。

だから、値段のシールは器の後ろに。

触った上で、観た上で、「これいくらだろう」と思ってもらえるように。



価格の設定も非常に悩ましい。

作品の価格は、人にとって一番わかりやすいものさしだ。

作家さんは、基本的に1つの作品を作るのに時間がかかる。

作品を売って食べていくためには、時間がかかる分価格を上げなければ飯が食えない。

そこで価格を下げたらただのボランティアになってしまう。


では、時間がかかることで、できることはなんだろうか。

時間がかかるということは、その分一つ一つに気配りができるということだ。

作品に付ける値段に責任を持ち、覚悟を持って日々作陶に取り組む、

1つ1つをじっくり観察しながら、作品を納得いく範囲で創りこむ。

だからこそ、作品に説得力がでてくる。


ほら、綺麗ごとを並べているように見えるだろう。

自分で見ても、客観的に見たらそう捉えてしまう。

でも、実際の辻さんとその作品たちを文字に起こしてみたらそうなのだから仕方がない。


じゃあいったい、なぜ綺麗ごとに見えるのか。

それは、今の時代がそうさせてしまっているのではないかと僕は思うのだ。



近年の、様々なSNSのサービスを例に挙げよう。

SNSには、写真を投稿したり、ちょっとした思ったことを投稿できる。

たとえば、写真をサクッと加工して、なんとなく良い雰囲気にもできたりする。

そして、気楽にそれにいいよねっていうのをもらって満足できる。


ただ、そこで少し立ち止まって考えてみてほしい。


‐‐ 簡単に加工した写真で、感動したことがあるだろうか。

‐‐ いいよね、は心が揺さぶられてでてきた反応だろうか。


時間というコストをかけず、大量生産された作品が氾濫する中で、

作品に執着し、人にグッと訴えるものが霞んでしまっているのではないか。


作り手は作品にかける想いがある。

誰かにしろといわれたわけではない、生まれ出る素直な欲求。

自らの理想へ挑戦し、考え、悩み、でも貫く。

そこに執着し続ける。


そして―――それは結果として”作品”になる。


だからこそ。

時間があるならば、是非とも作品をじっくりと触って、じっくりと観て、

その想いを感じてほしい。

そこに作家さんがいれば、作品を片手にじっくり話を聞いてみてほしい。



帰りの電車の中、心地よい暖房にまどろみながら今日一日を振り返る。

作り手と使い手が、握手して、時を紡いでいく。

そこには美しいと思うほどにまでに執着する作り手がいて、作品があったのだった。


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僕がスタッフになって感じたことは、モノへの執着の大切さである。

そのように作られた作品は、その人自身を投影する。

そこに惹かれるようにして、人がつながっていく。

僕と辻さんがそうであったように。

手創り市にはそういった出会いがある。


モノへの執着の大切さ。

僕は、これが、ARTS&CRAFT静岡手創り市の本質であると思っている。

だからこそ、選考を行うのだ。




" g r e e n "

僕らはまだまだ、成長の真っ最中。

もっともっと、執着し、磨き上げていく。

作家さんと、会場に来ていただける方々と共に


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※ご意見・ご感想は shizuoka@tezukuriichi.com 宛てまでお気軽にどうぞ。


スタッフ高木


・・・


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新緑から時を経て深まる緑

未熟から成熟への象徴としての

" g r e e n "




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