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レトロ映画館イベントVol.3『オハコ文化祭』

雑貨とカフェ ロバギター」さんから、またまた楽しいイベントの連絡がありました!
個人的にもかなりツボなイベント!なかなか無いイベントです、皆さん是非!

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裏面はこちら!

レトロ映画館イベントVol.3『オハコ文化祭』
<イベント紹介>
guild×gallery18-ohaco-が送る、レトロ映画館イベントVol.3『オハコ文化祭』の開催です。
マクドナルドのCMでおなじみの『かせきさいだぁ』のアコースティックライヴ
小沢健二、スチャダラパーのPVでおなじみの『タケイグッドマン』の映像上映
小田原からも『大礒妻』 鎌倉から『PARADISE ALLEY』のパン、
御殿場から『kitchin&bar 明天』の出張バー、雑貨とカフェロバギター、
Clt+alt+delなどの出店もあり、にぎやかな文化祭、
若者もそうでない無い方も楽しめるイベントです。
秋の夜長にレトロ映画館で文化祭!
恋人同士、友人同士、ご家族、お一人 みなさま遊びに来てください。

<場所・日時>
11月4日 金曜日 開場18:00〜 開演19:00〜
御殿場マウント劇場

<駐車場>
駅前市営駐車場をご利用ください。

<イベント名・出演等>

『オハコ文化祭』
主演 かせきさいだぁ+ハグトーンズ 、タケイグッドマン
助演 Akashic Records(ライヴ)
   Paradise Alley Bread&co(パン from 鎌倉) 
   nico cafe (アート(妻軍団 from 小田原)
   kitchin&bar 明天 (出張バー)
   Ctr+Alt+Delete(お菓子)
   雑貨とカフェ ロバギター(雑貨+)
   atelier SECESSiON (ねこブローチ from  沼津)
   and more‥

<チケット購入に関して>
チケットの購入に関しましては、下記の最寄の各販売店での購入、若しくはメールでのご予約にてお願い致します。
メールでのご予約の場合、お名前・必要枚数・ご連絡先(携帯番号等)を
御記載の上 info@ohaco18.comまで送信ください。
ご予約番号等をスタッフより返信致します。

入場料 前売り 3000円  当日 3500円

チケット販売店 注)チケット販売店、及び劇場での予約受付は行っておりません。
  御殿場 : kitchen&bar 明天
  御殿場 : 酒のいわせ
  御殿場 : RINCOLO
  御殿場 : 雑貨とカフェ ロバギター
  沼 津 : weekend books
  沼 津 : SECESSION
  三 島 : ♯dilettante cafe

主催・運営 guild×gallery18-ohaco-

お問い合わせ guild×gallery18-ohaco-  (ギルド・ギャラリー オハコ)         
                    mail : info@ohaco18.com
                    HP : http://ohaco18.com
       Twitter : http://twitter.com/#!/ohaco18

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高山 靖健
mail: shizuoka@tezukuriichi.com
twitter:
http://twitter.com/#!/a_c_shizuoka





ゆらぎ、おわり



昨日にて静岡市のギャラリー「とりこ」での清水美紅「ゆらぎ」展が終了した。

今回の「ゆらぎ」展では、私と清水さんと大野さんとの共作展であった。
私が企画をつくり、清水さんが企画にもとずきそれ以上の作品をつくり、その作品を大野さんが写真で捉えアートブックやスライドショーとなる。

今までにも会場をお借りして企画展を行う事はあったが、今回のようにギャラリーの主宰者であり、カメラマンでもある方と蜜に仕事したのは初めてだった。
初めて故に新鮮だったし、新鮮さはそのまま未熟さにも転換される事もしばしば。
経験を至上とは思わないが、今後に生かす糧となったと思う。

この「ゆらぎ」展を開催するのに何度も東京・静岡間を往復した。
常に清水さんを伴い、大抵そこには湯本さんやうえおかさんもいたりして、高速道路を上下に奔る。
東京・神奈川を越えると富士山が見えてきて、その先には海が見えてくる。
どちらも静岡にいた時には当たり前すぎてなんとも思っていなかったけれど、こうして何度も往復して景色をながめていると、なんとなくぼんやりと胸の奥の方が熱くなる事もしばしばあった。
特に晴れているときの海の水面がきらきら光る様子はグッときたし、曇っている時の水面もまた良いものであった。由比・興津間で見える断崖絶壁に、ちょこんと一本のみかんの木があるなあ〜と思うと、それはそれで可笑しくもあった。
ふざけている訳じゃあないけれど、私は常にゆらいでいましたよ。

ゆらぎは、
人が人である限り生じる悲喜こもごもな僅かな揺れであって、それを言葉で的確に表す事が出来ないもので良くて、そこに小さな価値があるような気がする蜃気楼のようなものであり、心の鏡。
そして、人と共有する事もでき、自分だけのものにしておくこともできる、自由なもの。
そんなことを思いました。

ご来場の皆さま、
ありがとうございました。


名倉
mail: shizuoka@tezukuriichi.com
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http://twitter.com/#!/a_c_shizuoka




清水美紅、ゆらぎ最終日

明日、10月26日にて清水美紅「ゆらぎ」展が閉幕いたします。
護国神社とは違ったギャラリー空間と清水作品の世界観をご覧ください。



清水美紅 HP http://shimizumiku.com

会場:ギャラリーとレンタル暗室 とりこ
住所:静岡市葵区駿府町1−46
電話: 054-252-2364
営業時間: 11:00~19:00
HP  http://toriko.eshizuoka.jp

企画:ARTS&CRAFT静岡手創り市

※会場では清水美紅さんとOHNO CAMERA WORKS大野仁志さん撮影による
 ARTBOOKを販売しております。editionナンバー付きの小さな原画付きもあります。

ゆらぎ展にあわせて制作したスライドショーもご覧ください
http://www.tezukuriichi.com/shimizumiku8.wmv 

ゆらぎ展開催前の清水・大野・名倉によるインタビューはこちら
http://shizuoka-info.jugem.jp/?eid=250


ARTS&CRAFT静岡
mail: shizuoka@tezukuriichi.com
twitter:
http://twitter.com/#!/a_c_shizuoka





ふたつの搬入

10月20日朝の5時ちょっと、東京より静岡へふたつの企画展の為に搬入へ向かった。
池袋駅西口にて湯本さんと清水さんをピックアップ、いざ静岡へ。
9時ちょっとから湯本さんの展示会場であるリベラル食堂さんへ搬入。
大量のドローイング作品をランダムに貼り付けつつ、キャンバス作品も各所に展示。
店頭には2頭のクマ、客席にはひとりのパンケーキマン、そして店内には小さな雲が二つ漂う。
リベラルさんのお店の雰囲気に負けない空間が出来上がったように思っていたら、湯本さんはにこにことほほ笑んでいた。
ちょっとジム・ジャームッシュ風に、ニュウヨオク風に、そんな写真を一枚紹介。


<勝山八千代・湯本佳奈江EXHIBITION>
是非ともご来場ください。

湯本さんの展示を終え、昼食をとり、そのあとは清水さんの展示会場であるとりこさんへ向かう。
清水さんの護国神社での「ゆらぎ」の展示は大変好評だった。
自分で言うのもなんだがとても良い展示であったと、今でも思う。
だからこそとりこさんでの展示は・・・不安だった。
もうこれは正直に告白するが、護国神社での展示を超える事は出来ないと思っていた。勝手に。
搬入をはじめすぐに不安が的中。
すべての作品は、護国神社での展示のスケールに合わせていた為、どうにもしっくりこない。
すべての作品を床に慎重に広げ、会話をしながら進めようとするが最初のひとつが手に付かない。
どうしよう?どうしよう?と焦り、時間は確実に過ぎてゆく。
清水さんも悩む。私も悩む。ほんとにできるのか?と。
休憩がてら自販機に缶コーヒーを買いに行き、外の空気を吸いつつ、考えた。
護国神社の展示は忘れよう。
今の現場で、空間にあった現実的な理屈のみでまずは組み立ててゆこう、と。
理想はひとまずおいとこう、と。
自分の案を清水さんに伝え、彼女は少し渋っていたが、ひとまずひとつの作品を手に、仮り置きとして設置してみた。どかしていた什器も利用してみた。
するとなんとなく展示の道筋が見えてきた。
小さな成功とは言わないまでにも、かすかに見える明るい兆しのようなものがむこうに見えた気がした。
そうなると、あとはゆく道はいつでも引き返せると思い、ひとつひとつ空間の理屈を実行してゆくのみ。
(中略)
やがて10時間ほどの格闘の末にひとまずのゴールにたどり着く。
笑ってしまうくらいに予定時間をオーバー。
終わってみれば随分とすっきりした展示になったが、その「すっきり」が逆に心地よい。
時間の積み重ねで複雑さを増すよりも、時間の積み重ねでシンプルにそぎ落とされた感じ。
護国神社でのゆらぎはここにはなく、それでも護国神社でのゆらぎがあったからこそ、自分たちはこの空間をひとまず作れたと改めて思う。勉強になった。
ご来場の際には作品に触れてみてください。
作品のそばを歩いてみてください。
そこには清水作品とあなたの間にあるゆらぎが存在しております。
そして、とりこさん閉店後の19時以降には会場はまた違った姿に変化いたします。
こちらもこうご期待。


<清水美紅【ゆらぎ】展>
本展開催にあわせて、清水美紅・ゆらぎのアートブックを作成しました。
こちらも是非ともお手にとってご覧ください!


週末も静岡へ。
ふた会場にて作家ともども在廊。
皆様にお会いできることを楽しみにしております。


名倉
mail: shizuoka@tezukuriichi.com
twitter: http://twitter.com/#!/a_c_shizuoka





勝山八千代・湯本佳奈江 EXHIBITION:一問一答

今週金曜日からリベラル食堂さんで、「勝山八千代・湯本佳奈江 EXHIBITION」が始まります。

住む場所も、考え方も、もちろん描く絵も違う二人による二人展。
そんな出展作家二人の紹介を兼ねての一問一答です。
二人の描く絵の背景が、ほんの少しだけ分かる気がします。是非、ご覧ください。

■勝山八千代
・簡単な自己紹介をお願いします
静岡出身です。自由に絵を描いています。他にはデザインやライブペイントなどもしています。

・絵をかきはじめたのはいつ頃から?
絵は幼稚園で画用紙とクレヨンをもらって描くようになってから今までずっと好きです。外に向けて描く機会が増えたのはここ2年くらいです。

・好きな絵描きは?
パブロ・ピカソ

・どんな音楽が好き?映画も教えて。
映画はクエンティン・タランティーノ
音楽はUKロック

・人を見る時ますどこを見る?
顔以外ならまずしゃべり方、言葉遣い

・好きな食べ物は、嫌いなたべものは?
好きな食べ物はからあげ
嫌いな食べ物ははまだわからない

・今、自分の流行は?
iPhoneアプリで暇つぶし

・これからどうしてゆきますか?
絵描きとしてなんとかして生き残りたい。展示かライブペイントをしたい。とにかく作品を作って発表したい。



■湯本佳奈江

・簡単な自己紹介をお願いします。
湯本佳奈江です。O型さそり座寅年です。日本語不自由です。

・絵を描き始めたのはいつ頃から?
たぶん2〜3歳くらいかと。

・好きな絵描きは?
キリないくらいいますけど、いちばん影響されたのはLUKE BESTと
WILL SWEENEY。

・どんな音楽が好き?映画も教えて。
家にいるときはMataphoric radioとGtronicRadio聞いてる事が多いです。
映画は…恋愛睡眠のすすめが好きっす。映画ではないけど動物ドキュメンタリー
観るのも好きです。

・人を見る時にまずどこを見る?
顔と服。

・好きな食べものは?嫌いなものは?
好き→ハンバーグ、からあげ、オニオングラタンスープ、ポテトサラダ
嫌い→白アスパラ、ナッツ類、みそ汁の中の玉葱

・今、自分の流行りは?
youtubeでお気に入りのチャンネルを見る。漫画を読む(少女漫画)。

・これからどうしてゆきますか?
基本流れに身を委ねます。が、そろそろ実家に戻るべきなんじゃなかろ
うかと深刻に悩んだりしてます。ぐんまちゃんの中に入りたい。

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勝山八千代・湯本佳奈江 EXHIBITION 展
会    期:2011年10月21日〜26日
会    場:リベラル食堂
詳しくは「こちら」 をご覧ください。


ARTS&CRAFT静岡
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ゆらぎ:インタビュー

清水美紅・二会場巡回展「ゆらぎ」 
手創り市からとりこへ・人と場で繋ぐゆらぎ インタビュー


第三回・ARTS&CRAFT静岡手創り市が終わった。清水美紅・二会場巡回展「ゆらぎ」。その第一会場となる静岡県護国神社での展示が無事終了した。
晴天の中、会場内にある池を背景にゆれる8枚の布。長さは3メートルのものが6枚、2メートルのものが2枚。幅はすべて約105センチという、非常に大きなサイズの作品/インスタレーションだ。
横一列に並ぶ布たち一枚一枚には、連作ではない、個々の作品世界が描かれていた。

絵に見入る。心の中に言葉ではとうてい翻訳できない感情が生まれる。その感情に答えるかのように、穏やかな風が吹き、布をこちら側へとふんわりと持ち上げ、絵がゆっくりとズームアップしていく。
感情がさらに波立つ。
絵に映し出される陽の光、木々の影、布に凹凸を与える何本もの皺。
そして波が引くように、またその絵はゆっくりとズームアウトいく。
風は止み、また次の風が吹き布をゆらす。

人は二つの庭を持っている。心という庭。世界という庭。その境界に人は立ち、今を生きているのだと僕は思う。
境界は常にゆれている。打ち寄せる波を受ける波打ち際のように、常にゆれながら変化している。
清水さんの作品世界を浴びることによって、僕の心の庭は、今立っているその場所を、ここではない何処かに確実に変えていた。
そこに吹く風のライン、色のある光の球体、花や木々や魚、少女の輪郭。清水さんの描き出したゆらぎは、まるで今、生まれたばかりのように、常に新しく生まれ続け、ゆれ動いていた。
どれだけの時間見詰めていても、見飽きる事はないと思った。清水さんの世界と、僕の心とが接する境界の上で、ゆれ続けていたいと思った。



 
清水美紅・二会場巡回展「ゆらぎ」。
これから展開する三人のインタビューは、ARTS&CRAFT静岡手創り市が開催される前に行なったものだ。まずは「ゆらぎ」の企画を立ち上げた、ARTS&CRAFT静岡手創り市主催者の名倉くんのインタビューからこの記事を始めたい。
(名倉→名 ライター/植岡→植)


植:この企画を立ち上げたそもそものきっかけを教えてください。
名:「内輪の話しになってしまうけど、ARTS&CRAFT静岡内で、今回、スタッフが増えるって意外に具体的に伸びる要素がないなって思った。自分たちに対して、全員含めて。皆で無事にやれることで及第点だけれど、個人として及第点では我慢出来ない。かといって幅を広げるってことが、一人じゃ出来ない事が多い、僕らの場合は特に。でも何かをしないという選択肢は今はないと思って、何をしたらいいか? って考えた時に、会場の中に一般参加の方以外にも自分達で企画から立てて、場所をつくるということをしようという風にシフトチェンジした。僕は今迄平面の作家さんとやって来た事がずっと多かったから、比較的得意な分野で静岡って場所で、新しいことをやろうと思って。絵描きさんを誰を連れてくるかって考えて、清水さんにしようと思い付いて。静岡にいる時に、会場をどんな風にしたいというのと、会場の様子を映像で動画撮影して清水さんに送ったのが、この企画のきっかけと言えばきっかけかな」

植:今回のテーマ「ゆらぎ」は、企画を立ち上げる上で同時に出て来たコンセプトだったのでしょうか?
名:「清水さんと企画を考えるという事で、清水さん=「ゆらぎ」だなと思って。単純に「清水美紅展」でもいいんだけど、誰でも通じる言葉、耳に入ってぽっとイメージできるような言葉で、イメージも人それぞれ違うかもしれない、という言葉は「ゆらぎ」かなってことで。体裁を整えるじゃないけど。言葉としても悪くないなと思ったから。同時だね。」
植:「清水さん=ゆらぎ」をもう少し深く掘りさげて語るなら?
名:「清水さんは自分でも言っているけど、情緒が不安定というか、不安定というよりも、いろんなことに対して精神が反応する。良く言えば色んなことに気がつくし、それに対する反応がある。でもゆらぎって誰にでもあることだから、それをどう表現するかってことは別の話だし、放っておく人もいればそれに対して反応する人もいれば、バランスがいい人もいるだろうし、ゆらぎがない人はいないってことで。「鏡」かな? 言葉自体が」

植:今回布に絵を描くことを企画したのは名倉くんだった?
名:「一番最初に企画書出す時から布にしようと決めていたと思う。枚数や細かい点は、場所を決めてから、清水さんが考えた。布地って事に関しては最初から決まってたこと。布という媒体がキャンバスとしてはすごく不安定。安定させることも出来るけど、基本は何もしなければ不安定なもの。書く時にも不安定だし、飾った時にも不安定。「ゆらぎ」というテーマに対するそれも鏡かもしれないよね? ものが変わるだけで、状態が一緒というか。単純に布でやったら面白いんじゃないかなとも思ったし、もちろんそこには今言ったような意味もあるし。両方です」

植:ARTS&CRAFT静岡から、とりこの個展へ。その流れは、名倉くんの中で最初から決まっていたのでしょうか?
名:「場所迄は決まってなかったけど、流れは決めてあった。願望ね。今回、静岡の開催において、二日間清水さんが展示します。それが、二日間で終わってしまったら勿体ない。静岡で僕らが開催する以上は、静岡の街、人に繋げていきたい。そういうことやりたいなって。それが自分に対しての今回の課題。自分とこのスタッフに何かを求めるならば、まず自分自身に求めないとフェアじゃないでしょ。とまあ、二日で終わるんじゃなくて、それ以降にも繋がる事をやっていかないとダメだなって、それを人に任すことはできないし、やるなら自分だなって」

植:今回の巡回展の会場となる、とりこさんのことを聞かせてください。
名:「僕と清水さんの中で、巡回展をやらせてもらいたい会場がとりこさんに決まって、とりこさんにアポを取って、ポートレートと作品の途中の過程、本来作品の途中の過程を見せるってことはよくないことなんだけど、今回は、大野さんに写真を撮って貰いたいというのもあったので、その作品の過程にあるものも見て貰った方がいいかなって思って。それで、清水さんと一緒に企画書を持って行って、その時に、大野さんも奥さんもいて、話しをして、その場で決まったんだよね」
植:名倉くんはそれまでに大野さんの写真を観たことはあったのですか?
名:「たくさんではないけれど。大野さんはカメラマンで、自分でギャラリーも主宰している。場所も作品もつくる人。とりこさんの企画展の時に、自分がいいなと思う写真が大野さんだった。大野さんの写真のピントを合わせてる対象、周りにある空気、光の具合がいいなと思って。撮っている対象をよりも周りの空気感がいいなと思って、大野さんに是非撮って貰いたいと思った」

植:名倉くんたちが立ち会った作品の撮影は、静岡手創り市のシュミレーションの日と、廃校・CCCだよね? 撮影に立ち会った感触は?
名:「撮影してみての感触は、自分たちが立ち会って一緒にやらないとダメ。これは心の底から思う事で、写真がいけないとか、そういうことじゃなくて、一緒につくってくってことは、こう撮って欲しいとか、こうはして欲しくないとか、というのをお互いはっきり言った方がいいと思う。それを言えるかどうかっていうのは、性格の問題もあるけど、性格のせいにするならやんなきゃいい。あとは立場の問題。清水さんは絵描きだし、つくってる人間、大野さんもカメラマンだし、つくってる人間。それに対してああだこうだ言いたくはないというのはあったけれど、それじゃあ一緒にいいものはつくれない。だったら清水さんの作品を好きなようにすればいいだけだから。それを清水さんにまかせるつもりはないけど、誰が言うかっていったら、僕が言うのが務め。お互い会話をしながら、やっていると自然と気分が上がって来る。そこで初めて成功するきっかけが生まれる」

植:二つの場所で撮ったものが冊子になると思うのですが、それを見てどうですか?
名:「CCC・廃校で撮った写真はやっぱり一番いいかな? なんでかって言うと、清水さんもいて、大野さんもいて、僕もいて三者がやりとりをしながら撮ったものだから。ビジョンがはっきりしている。写真のピントを合わせる様に3人でピントを合わせて、3人で実際にシャッターを押す感じだから」

植:今回清水さんと共に企画をやって来て、清水さんに感じた事、気付いたことがあれば?
名:「ひとつ気付いたのは、清水さんが作品を布地でやってみて、一個一個の作品が、縦3メートルのものと、2メートルのもの、横が約105センチ。単純に大きい。それで初めて清水さんが、設計図、下絵があった上で本番を書いたというものがあったから。設計図のことはずっと今迄思って来たことだけど、やっぱり何事もアドバイスだったり、物ごとを言うってことはタイミングがあると思うから、思った事をすぐ言えば良いとは違うと思うんだよね。今回のタイミングで思ってた事を言えたっていうのは大きい。下絵をつくって本番にいった作品は、女の子たちが何人か出て来て、すごく強い絵、ぱっと見、印象に残る絵。ゆらぎとどう関係するのか、又別の話かもしれないけど、そういう絵を一つ清水さんが書けたと言うのは大きいと思う。それを本人がどの程度考えてるのかわからないけど、清水さんが絵で食べていこうってことは、絵で稼ぐってこと。稼ぐってことは買ってくれる人、なんらかのオファーをする人がいる訳だから、そこまでやらないと絵ってものは売れないと思う。特に清水さんの絵にはそういう性質があるから。本人がそこまで気付いているかどうかはわからないけど、それを清水さんがやって、自分で感じて、僕にちゃんと言ってくれたってことは、それはすごく大きな進歩じゃないかなって。それは単純に、僕と清水さんの関係でいえば、成功しているかなって思う」





次のインタビューは絵描きの清水美紅さん。
「なんだか、すごく強そうだね……」
以前、ラフな原稿に起こされた自分のインタビュー記事を見た清水さんは、自分の身の丈に合わない居心地の悪さのような、訝し気な表情を示した。
「絵を描いているとき、私は自分が強いと思える。だけど、電車に乗っている時の私は、すごく弱いと思う」
そう打ち明けてくれたことのある清水さん。その言葉には清水さんの等身大のリアルがある気がしたし、その時それを僕に伝えたかったのだということも良く理解できた。そしてそれもまた清水さんのゆらぎなのだと思う。
そんなリアルを抱えた一人の絵描き、清水さんの今を語る言葉たち。
(絵描き/清水→清)

植:今回の巡回展のコンセプト「ゆらぎ」について聞かせてください。
清:「「ゆらぎ」。その言葉を考えたのは名倉さんで、私の内面のゆらぎってことなんだけど。名倉さんは私のことを知っているからね」
植:それは清水さんの魅力でもあり、芸術性に繋がる部分でもあるゆらぎ?
清「もしかしたら、展示の仕方含めてゆらぎなのかもしれない。名倉さんは、この企画で私が与えられたものを見て、色々考えたりとかそういうプロセスを含めゆらぎと思ってるのかもしれない。あと、手創り市の展示は外のゆらぎ。風が吹くこととか。ギャラリーのゆらぎは人が絵の近くを通ったり、ドアの開け閉めすることで人工的な風が起こる、人の内側のゆらぎ」

植:何故この巡回展を静岡の二会場でやるのか? その理由を教えてください。
清:「自分がなんでかって思った時に、他の所だったら、自分に対して答えが出せない。今回のARTS&CRAFT静岡は私だけのものではないと思っていて、私だけの仕事ではない。そこには色んな人の仕事がある。だから、ARTS&CRAFT静岡で出した絵を、次に、東京のここのギャラリーが好きだからやるとか、自分だけの感情では動きたくない。人とやるってことを考えた。難しいところでもあるけど。自分の意見を言う所ではいわなきゃいけないし。わざわざ絵を描いて、わざわざ静岡に来て、休みの日を潰して、お金も使ってってなって、それで絵を展示して、絶対に売れる訳じゃない、お客さん全員が素敵って思うようなものではないかもしれないけれど。絵をわざわざやるってのがあって、でもわざわざやるだけでもいいじゃないって自分で思ってる。自分がやりたいことをやる。貫きたい気持ちです」
植:清水さんは以前、「絵を描いている時私は強い。だけど電車の中で私は弱い」という事を言っていたけど、その強さ、絵に対する真摯な姿勢が今の台詞からも伺えましたが。
清「開き直る所が、もうちょっとあったらいいんだろうなって思う。自分ではこうやってるって言うんだけど、それは他の人にとって大事なものな訳がないって思う所がちょっとあるんだよね。全部自分に対しての強気な部分は、それによって自分を救ってるっていうか。それを他の人と関わるところで活かしたいです」

植:今回清水さんの作品を撮影してくれた大野さんの、撮影の様子をみて感じた事は?
清「まず率直に、暑い中嬉しかったですね。すごく暑くて、休憩入れたりしなくて、写真撮って、確認してって、一時から三時の二時間ずっと続けてくれて。CCCの教室の中はエアコンは効いてたんだけど、光を見た時に廊下の方がいいかなって、エアコンが効いてない廊下で撮影したの。暑い中嬉しかった。それが、いくらお互いに言葉で良いものにしましょうねって言っていても、お互いに目で見たもので気持ちが盛り上がるのが一番だって思うのね。撮らされてるとかじゃなくって。自分で自ら撮ってる、こっちを理解しようとしてくれている感じがしましたね」
植:三人で意見を出し合いながら、ビジョンを決めていった感じ?
清「(ARTS&CRAFT静岡の)靖健くんが絵を持ってくれて、名倉さんが具体的に、ここはこうの方がいいですよね? とか、この人物のここからここまでは入る様にとか、具体的に言って。大野さんがわかりましたって言って撮って、大野さんの感覚で撮ってくれる瞬間もあって」

植:作品を撮影して貰って今思う事は?
清:「綺麗だなと思うのと、写真になって自分の絵が切り取られてて、その中で、お話が出来てる、ストーリーとかがその中で完結しているというか。ムードが完結しているって思って。それは自分がしないこと、だから新しい」
植:写真になったことによってそれが加味されたってことだよね?
清「例えば私は絵を描いて、基本的に絵が大きいのですけど、B3サイズ位からそれ以上。その一部を切り取ってポストカードにするとか、そういう事はしない。特にこうだからしないっていう理由もないんだけど、写真って切り取られる訳だからそれは面白かった。単純に自分がしないこと。写真って景色を切り取るってことでしょう? 」
植:切り取ることによって物語やムードが完結したってことですよね?
清:「ちょっと自分の手から、作品が離れた感じがする。不思議ななんとも言えない感じ」

植:作品を描いていた期間は?
清:「護国神社に展示する絵に関しては二ヶ月位。平日は描かない日もあるけど、土日は基本的に描く。一枚をだいたい18時間位かけて仕上げる感じ、何日かにかけて。で、全部書き終わらないうちにやめて、次の絵にかかったの。8割から9割くらい書いたら次の絵にいくってしてて。何故なら、最後横に並べて展示するってわかってたから、そのバランスを見たくて。でも、一枚一枚が続いてる訳ではないんだけど。どうしても見る側は、黄色がどうとか青がどうとか、色だとわかりやすいんだけど、そういうことを視覚的に拾うと思うから、バランスを見て、ここいらないかなとか、上から違う色塗ったりとかして」
植:そういう描き方したのは?
清:「初めて。それをしていない方が面白いと思うの。野生味っていうか。結構冷静な話だと思うのね、最終的にバランスを取るのって。そういうのをやってないほうが野性味を感じるんじゃないかなと思うんだけど、今回はそれをやって良かったと思う。今出来る事はしたかなって。最後にバランスを整えてみて」

植:名倉くんの話では、今回、初めて下絵/設計図を描いた絵があったとか?
清:「あの中の一枚だけやってみた。気軽に。絵を布に書く前に、クロッキー帳にちっちゃいバージョンで。こういう感じかなあって、頭の中で色も決めて、ということをやってみた。単純に描いてて楽だった。すごく楽。楽っていうのがいいのかどうかって言うのはまだ判断がつかないんだけど、紙にあるものを写す、大きさ、縮尺を変えて、拡大させて写す。まず描いてて楽だなっていうのと、書き終わってその作品はすごい強いなって思った。家で見てるときは気付かなったんだけど……。シュミレーションした時に、ああいう広い場で実際の形でやると、一枚一枚見た時に、その絵はすごいバランスがいいなって、安定してる感じがして。家の中で見てるときは、そんなに気に入ってなかったんだけど」
植:それは、今迄の書き方と違ってたからというのもあった?
清「ある。そんなことしたら簡単じゃん、って気持ちがあるんだと思う。それをしてないのが自分のスタイル? っていうのは何か嫌だけど、スタイルだと思い込んでたのかもしれないし。設計図を描かないでぶっつけ本番で描く事って、すごいしんどいのね。楽か辛いかといったら設計図を書く方が楽。描かないのは辛い、しんどい。でも絵ってそういうもんだと思ってるから。だからその辛さに疑問を持たなかった。でもやって楽だったなって気持ちがあったからか、その絵に対してそこまで気に入ってはいなかったのかも」
植:でも出来上がってみて、強い作品ができたっていうのは面白いですよね?
清「面白い。だから、多分それはそれでやってみたらいいってだけの話で、辛いとか辛くないとかこだわるのはどうでもいい。だからやってみたらいいんだろうなって思った」

植:最後に今後の目標を聞かせてください。
清:「遠い、遠いって思っちゃってるけど、目標は独立です。独立は、いきなりは無理だけど、自分から向かって行きたいです」
植:ありがとうございました。





最後に登場するのは、今回、清水さんの作品を撮影し、巡回展の第二会場でもあるギャラリー「とりこ」を主宰するカメラマンの大野仁志さん。
 大野さんの言葉からは、何故、今回清水さんの巡回展を静岡にある「とりこ」で開催しようと決意したのか? その背景も伺えます。そしてその背景には、これからの静岡を変えていこうとする強い意志もまた明確に見えるのです。
(カメラマン/大野→大)

植:ARTS&CRAFT静岡手創り市の名倉くんの方から今回の企画の方が持ち込まれて、そこから今迄の流れを、順を辿って聞いていきたいと思います。まず、名倉くんたちが企画書を持って来た時に、どういった印象をお持ちになりましたか?
大:「うちのギャラリーとしては、そういった若い方の作品を展示させて頂くことは是非やりたいと思っていた事なので、非常にありがたいお話だと思いました。護国神社のイベントも素晴らしいイベントなので、その名倉さんがこの方って、一緒にこられ方でしたので、信頼してお受けしました。」 
植:ARTS&CRAFT静岡にも撮影会で?
大:「撮影会でお邪魔して。護国神社を選ぶ辺りがすごくセンスがいいというか」
植:その辺りで文句なしというか? スムーズに気持ちは決まっていった?
大:「そうですね。気持ち的にはお話を頂いてありがたい、やらせて頂きたいと思いました」

植:今回の企画は清水さんの布の作品を、ARTS&CRAFT静岡ととりこさん、静岡の土地で繋ぐというものなのですけど、そこでまず、ARTS&CRAFT静岡の印象を聞かせて頂きたいのですが?
大:「みなさん作品自体素晴らしいし、みなさん本当に楽しそうやっていたので、静岡でこういうことをやって頂けるのはいいなと思いました。東京、大阪の大都市に挟まれて、文化や人が大都市に流れてしまう中で、静岡に文化と人を集めてくれる、静岡にとってとても意味のあるイベントだと思います。静岡でも、どんどんそういうことをやっていかなくちゃいけないなとは思っています」

植:清水さんの人と作品に出会われて、その第一印象を聞かせて頂きたいのですが?
大:「清水さんは線も細くて、ちょっと小さい。華奢な感じなのですが、パワフルに描かれるんで、すごいなって印象は受けましたね。」
植:その第一印象を経て、今の清水さんの人や作品の印象を聞かせてください。
大:「力があって、宇宙みたいな感じを受けたりとか。どこまでも広がっていくようなイメージがすごくあって。この前も護国神社で撮影したんですけど、その奥にもっと世界が広がっていくような感じを受けて。平面なんですけど、風でゆらぐ。もちろんイメージされていると思うんでけど、ゆらぐことで、奥行き感が出て、もっともっとスペースが広がっていくような、そんな広がりを強く感じましたね」
植:絵の切り取られたフレームだけで終わっていない?
大:「そうですね。終わっていない。広がりを感じました」

植:名倉くん、清水さんとこの間、CCCで撮影をされた時に、三人で意見を述べ合って、ひとつのビジョンが合致するようないい撮影が出来たと聞いているのですけど、その時の印象などをお聞かせください。
大:「名倉さんも一生懸命、本当にいい角度を探したりとか。僕も僕の持ってるものを押しつけではなくて、僕の仕事っていうのは、清水さんと見に来てくれるお客さんを繋ぐパイプ役なので、名倉さんもそういう感覚だったと思うんですけど、そのために自分の出来ることをお互いが出し合って、ひとつもものをつくっていくという感じだったので、僕自身もすごく楽しかったし、非常良いお仕事をさせて頂いたと思っています」

植:最後に巡回展「ゆらぎ」を、このとりこさんで開催される意義をお聞かせください。
大:「護国神社の後を繋いでいく。もともとここをつくったのも、ギャラリーというふうにうたっているんですけど、人が集るコミュニティーであって欲しいなというのが、ここをつくった第一の理由なんです。清水さんの作品がここで映えることで、いろんな人が来てくれて、いろんな形で繋がってくれたらいいなと思っています。それこそ僕がここを始めた根本の部分とそこは合致するので、ありがたいお話だとは思っています。清水さんの作品ってやっぱり広がりがあるので、ここからどんどん広がっていってくれれば嬉しいなと思っています」


「三人のピントを合わせるようにシャッターを押す」とあった、名倉くんの台詞のように、今回三人が中心になって動いたこの企画は、まさに巡回展「ゆらぎ」と言う名の未来を鮮明に描くために充分だったと、このインタビューを終え、感触を得た。

名倉くんの下絵の提案が、清水さんの作品の可能性を広げる。
清水さんの絵に広大な広がりを見出した大野さんが、それを写真に切り取ることによって、そこに新しい物語やムードが誕生する。
そういった取り組み合いならではの相乗効果が、今回の巡回展にも、また様々な形で反影されるはずだと、僕は心から思っているのです。
そして大野さんの主宰する「とりこ」が、静岡の文化や人との繋がりをより豊かにすることを目的としてつくられていること。ここ静岡からどんどん文化を発信していこうという開かれた意志。
大野さんの想いが、今回、名倉くんや清水さんの想いと合致し、そして静岡の二つの場所で繋ぐ巡回展開催の運びとなったこと。その背景を、三人のインタビューを経て知った時、この企画に関わる人々の全体像的な気持ちが浮き上がり、そこにこの三人を繋ぐインタビューを行えたことへの、確かな意義を僕は覚えたのです。
外のゆらぎ、「ARTS&CRAFT静岡手創り市」が終わり、次は内なるゆらぎ「とりこ」へと場が繋がれる。そこで次に僕らはどんなゆらぎの中に身を置く事ができるのか? 一鑑賞者としても実に楽しみです。
 
うえおかゆうじ
・・・・・

清水美紅【ゆらぎ】展
会期:2011年10月21日〜26日
会場:とりこ
詳しくは「こちら」 をご覧ください。


ARTS&CRAFT静岡
mail: shizuoka@tezukuriichi.com
twitter:
http://twitter.com/#!/a_c_shizuoka





10月14日


開催初日の朝。9時開始頃にはお子様連れの方が多数見えた。きっとこの時間帯はのんびりとみる事が出来るだろうし、朝の木漏れ日も気持ちがいい。

開催後5日。
事務局で次回までの道のりを模索、今月末にスタッフと打ち合わせを行うのでそれまでにいろいろとまとめておきたいと思う。 
そして来週はARTS&CRAFT静岡が企画をしたふたつの展覧会が始まる。
清水美紅さんの「ゆらぎ」展、勝山八千代さんと湯本佳奈江さんのリベラル食堂での展覧会。
いずれも力のある絵描きとイラストレーターの展覧会となるので私たちも気を引き締めて臨みたい。

ふたつの展覧会、詳しくは「こちら」 まで。

この展覧会の後には、今回出展して頂いたつくり手の声を発信致します。
今月末を予定しておりますのでお楽しみに!

それではまた。

名倉
mail: shizuoka@tezukuriichi.com
twitter:
http://twitter.com/#!/a_c_shizuoka




2011秋季ARTS&CRAFT静岡を終えて(前・後編 まとめ)

10月8・9日開催された2011年秋季ARTS&CRAFT静岡は天候にも恵まれ無事終了することができました。出展者の皆さま、ご来場者の皆さま、誠に有難う御座いました。

さて、前日準備から2日間の開催までに見たこと聞いたこと感じたことを日記のように綴ってゆきます。前編・後編となります。宜しければご覧ください。

10月7日、早朝より東京から静岡へ。
静岡に到着し、もろもろの大量の荷物を車に積みこみ会場へ。
すでに前日準備に取り掛かっていた一部スタッフと合流し、作業に取り掛かる。
3回目という事もあり、作業はとてもはかどる。こうした作業に少しでも停滞がある事=自分がやるべき事を理解していない。それは前日準備の前の問題だと思うので、はかどって当然だけれども、それはそれで気持ちがいい。
昼ごろ一旦休憩とし、スタッフと共にお弁当を食べ、その後も作業。
はかどる作業といえど、やるべき事は多く、やるべき事をさがせばきりがない。けれども集中しだすとその「きり」までいきたくなる。一緒に作業をしていたスタッフも当たり前のようにきりを求める。これは良い傾向だと思う。夕方、真っ暗になったところで会場の池の周辺に大量のベンチを設置し前日準備は終了。その後、夕食をとり解散。へとへとのスタッフであったけれども表情が明るい事にほっとする。ほっとするもつかの間、フライヤー設置スペースの重石として使用するいい感じの石を東京に忘れてきた事に気が付き、夜も更ける頃、三保の浜に石を拾いにゆく。まっくらでてんで見えなかったし、どう考えても怪しい人間だが、なんとか必要な数を集めたのでひと安心。
この事は開催終了までスタッフには言わずにいた。笑われるから・・・

10月8日、スタッフ集合時間30分前に到着すると既に高山が会場へ来ているようであった。その様子にふっと笑みがこぼれる。
その後、スタッフも全員集まり、朝の挨拶も手短に自分の持ち場へ着く。
今回から東京スタッフの手を借りず、半数がはじめてのスタッフとしての参加。
初日のスタート、はじめて自分(初めて参加するスタッフ)が出展者を迎える立場となる緊張感。
開催までに全員で、各自で、準備をしてきたが、準備と本番は訳が違う。
肝心なことは一番最初に接する出展者の方をちゃんと迎え入れる事ができる事、とその小さな成功体験。
それは自分達にとっても出展者の方にとっても同じ事で、緊張している状況だからこそ笑顔で迎え入れる事を意識することって大切だと思う。その時は一瞬であっても、そこに至るまでの自分たちの時間を、なにより出展者の方の準備してきたであろう時間を無駄にしたくはないから。
搬入はなんとか終わり、出展者の方のテントや作品の展示が始まる。
その景色と音は様々なリズムや音をたてながら耳に心地よい。出展者の方はそれどころじゃないだろうけれど、ほんとにそう感じる。これはスタッフとしての役得。
8時過ぎ、情けない事にわが靴のソールがべろんべろんになってしまいあまりにもみっともないので出展者の方がいる参道をよけ、一旦自宅に戻らせてもらいたいとスタッフに告げ、笑い転げるのを我慢するスタッフの微妙な笑顔をよそにそそくさと靴を取りかえりに戻る。振り返るととあるスタッフはこっちをみて笑っていた。
9時、初日のスタート。出展者の方の工夫をこらした展示を見ながら、あらかじめ決められたスタッフ配置につく。ここから先、私たちスタッフは主に会場周囲の喧騒を会場内に持ち込ませないよう様々な対応をする。はじめて参加するスタッフからすれば緊張の連続であっただろうけれど、それも時間の経過と対応を摘み重ねてくると僅かながら余裕が生まれる。その余裕がうまれた頃に朝食。
スタッフの朝食は決まってサンドイッチ。皆一緒。当たり前のようにいつも作ってくれる方へ感謝しつつも急いで口の中に放り込む。この辺りからお客さんが来場し、会場内は徐々に賑わいを見せる。
お昼過ぎ、SBSテレビの方の取材を受ける。会場内を歩きつつインタビュー。緊張は特にしていなかったが、聞かれることに対していまいち良い受け答えができない自分がいるのを感じた。はっきりと。かっこいい事を言う必要はないのでその意識はないが、自分が普通に言うだろうことを言い始めていると、いつの間にか尻つぼみになりまとまらない。唸る。担当の柏木さんは何度も私が話しやすいよう試みてくれていた事だけはしっかりと覚えている。過ぎた事だが自分にとっても懸案事項。
でもとても嬉しかった事がある。担当の柏木さんは朝早い時間から会場へ来ていて、それこそ会場内を隅々まわり、ほぼ終日会場にいて、翌日も予定外にも関わらず会場へ来て取材をしていた。柏木さんは柏木さん自身の仕事をしていて、そこには良い意味で、仕事なのか?私ごとなのか?と思わせるような姿勢であったように思う。敢えて間違った言い方をするけれども、積極的かつ明るい公私混同はいいと思う。(柏木さんが公私混同している、という訳ではないけれども)とにかくそんな柏木さんに心を打たれたし、そんな方と少しでも時間をご一緒できた事は有り難い。
初日はスタッフ全員いつもと同じように会場内をあまり見る事ができなかったが、そのおかげか初日が終わる頃にはスタッフの表情に程よい自信がうかがえたように感じた。
8日の終了直前、この日のみ出展していたフードエリアの方や場づくり:Rustさんと話ができたことにより今後の収穫につながるヒントを得た。これは9日の話となるのでここでは割愛。
急ぎながら出展者の方のブースを撮影させてもらったけれど、急ぐとろくな写真がない。
なので一枚のみ紹介。



8日・初日も終了し、出展者の方もこの日の撤収を完了。
会場の清掃、見回りをして夜間警備のスタッフにバトンタッチ。
夕食はスタッフ全員で鍋を囲み、少しばかりの感想を話し合いながら解散。
いつも思うが初日はあっという間に過ぎてゆく。
光陰矢のごとしなんて言うが、その通りでおっかけるので精いっぱい。
解散後は程よい疲労感をかかえて帰宅。
明日は二日目。そして最終日。
そんな事を思うといてもたってもいられなくなりこの日感じた事、次につなげる事を書きだし、何度も見返しつついつの間にか夜の境界線へダイブ(睡眠)。そして早すぎるリターン(起床)。
目がさえ、気分はとてもクリア。
とりあえず夜間警備真っ最中の護国神社へ行く事にし、自分も夜間警備をやってみようと思い出発。
しんと静まり返る会場は深い闇で、そこにあるのは夜間警備スタッフが歩き回る赤色灯のみだった。

ー 後編へ ー


前編から後編へ。

10月9日丑三つ時、起床、目がさえ、気分はとてもクリア。そのまま夜間警備の護国神社へ。
神社へ到着するとそこは闇。うっすら出展者の方の頑丈に縛られたテントが見える。
参道を等間隔で歩く夜間警備のスタッフ。赤色灯のあかりが会場をダンスするように動く。
受付には、誘導棒とライトを携え待機するもうひとりのスタッフ。
彼らは日中の開催時に会場には現れない助っ人のようなものであるけれど、開催時には見えない存在に私たちスタッフは助けられているし、彼らがいるからこそ私たちは安心して休む事が出来る。それはスタッフ全員に知っていてもらいたい事であり、知らず知らず私たちは彼らにバトンを渡し、朝また受け取る。これは見えないリレー。
彼らには声をかけず、自分も参道から本殿、契約駐車場の方へ歩いてみる。
虫の声しか聞こえない静寂の中、砂利道のざくざくという足音だけが響く。前方には小さく光るビー玉がふたつ。いつもの人懐っこいノラの目だった。このノラだけは昼も夜も関係なく足元をすりすりしてくる。まあそれはどうでもいいこと。
夜も明ける頃、本殿の御開帳が始まった。夜間警備のもうひとつの目的は、この御開帳の時をこの目で確かめるつもりであったが、受付で作業をしていて、それには間に合わなかった。残念。
6時ちょっと前、夜間警備のスタッフたちと引き継ぎをし、彼らに夜の様子を確認。何事もない事が当たり前でも、彼らがその当たり前の状況をつくってくれることに変わりはない。夜間警備をしてくれる事に感謝しつつ、朝食を渡す。彼らの朝食もサンドイッチ。皆同じ。
やがて、スタッフたちがちらほらやってきて、「おはようさん」と声をかける。
自然とトイレ掃除に向かう人間、今日の確認をする人間、新人スタッフと以前からいるスタッフの会話、それぞれがまだはじまりの前の時間に確認する事を自分で考えて質問してくる。
二日目、朝恒例のラジオ体操がはじまった。これは近所の方が護国神社の鳥居前でやっているようで、大抵スタッフの数名はなんとなく参加し、いつの間にかしっかりとラジオ体操をしている。これはこれでなかなか良い光景。



6時ちょっと、改めてスタッフが全員集合し、昨日の反省や今日やるべき事を話し合う。
やるべきことに変化はないが、今回初めて参加するスタッフにとって確認する事で示しあうことがある。頭の中で考えている事、気がついた事、それを言葉で吐き出すことで頭の中がクリアになり、それが伝える事の第一歩のように思う。濁った頭では伝わるものも伝わらない。
7時、出展者の方が少しずつ搬入にやってくる。皆さん、今日もやるぞ、という表情をしている。
そんな表情を見ると私たちも、今日もやりますよ、と気が引き締まる。
9時少し前、すでに会場にはお客さんがちらほらと来場。
9時スタート、最終日がはじまる。始まりの合図はないけれども、自分の中で9時になるとスイッチが入る。
この日、初参加のスタッフは昨日一日経験している。仮にスタッフとして0.75人前だとしよう。それでも一人前としてやってもらう。そこは待ってられないし、自ら一人前へ歩むしかない。
通常のローテーションを組む。それぞれが開催中の持ち場を一人で担当し、前後〜全体と連絡を取り合いながら進める。新人扱いできない理由、今日という日が終われば次は半年後になってしまうから。今日できなければ半年後はおそらくできない。スタッフ同士助け合う事は大事だが、いち個人として役目をまっとうしなければ助けてもらうことはあっても、お互いに助け合う事はできない。
「STAFF」という腕章は吹けば飛ぶようなぺらぺらなものだが、実際の中身はそんなに軽いものでもない。それを体感し、共有できるのがスタッフとしての醍醐味と思う。スタッフとして・・・そんな事ばかり書いてきたけれども、この日印象に残った事をいくつか。

とある漆の椀物をつくる作家さんはこんな事を言っていた。
「自分のつくるものは一代限りでいいし、陶器のようにいつまでも残るものではない。けれども、自分が作るものはすべて土に還る。」
この言葉にこの人の本心をみたような気がしたし、それが彼のつくり手としての本質のような気がした。それはたかが言葉であるかもしれない、けれどもその言葉には大袈裟なようだが魂が込められているような気がした。それはとても自然に出てきた言葉のようだったから。

毎回出展してくださっている珈琲屋さんをのぞいてみていいなあと思った事がある。
それは時間帯によってブレンドの種類がちがうこと。常になんでも提供するではなく、選ぶこと、制限する事で自分ができうる最大限のサービスをしようとしている証と思った。その看板にはそんな事を感じさせる言葉は書いていないし、あくまでもふつうの手書きの看板だけれど、ふつうで相対する人間に伝わるならふつうでいいじゃない、と感じた。珈琲で伝わる事は味や香りだけではない、景色やどこかの記憶のイメージもある、と。
 
とある器の作家さんをのぞいてみて感じたこと。
彼は第1回目から益子から参加してくださっていて、今回の器とその見せ方に大きな変化があった。
益子と言えば民芸で、彼も窯元で修業をしていたのだろうけれど、それまで幅広く見せていた作品群がかなり集約され、そして今までにない刷毛目と釉の力強さを感じられた。あとから人に聞いたことであるけれど、今までにやってきた沢山の事を絞り、自分の中でこれだ!!と感じた事を感じるままにつくり、やってきたようだった。それは当り前のようだけれども、きっとそこに至る前の過程にいくつものブレ?があったからこそだし、彼の土は彼自身の肥やしになっているのだろうと思う。そして見せ方の変化も当然作品を絞る事によって自然に変化していったのだろう。部分が全体に、全体が部分に、そんなことを考えた。

最後に印刷物の工程でうまれた端材(廃材)をつかって作品をつくる作家さんのこと。
一見シンプルでデザイン性に優れた作品に見えるし、それはその通りなんだろうけれど、そこには既に在るものから新しいものを生み出すための情熱や探求心があり、でも行き過ぎない制限を自身にかけているのが窺えた。つくり手というのはすべてそうしたものであると承知しているつもりでも、物をつくらない私は目の前にいるつくり手の作品を見て、話を聞いてみる事によって改めて再確認させてもらう。目に見える形をつくっているのは間違いない。でもそこには見えない何かがあって、それがつくり手にとっての言葉ではない気概のようなものだろうと思う。自然とこうなりました、はあり得ない。その過程を見ようとする事が、作らない人間にとってのつくることとむきあう姿勢と思う。そんな事を教えられる。

10時ころから多くの来場者でにぎわい、それにほっとしつつ、動き回るスタッフを尻目に、昼過ぎから私ともう一人のスタッフはフードエリア周辺の改善点を確認しあう。
全体の景色をひいて、せまって、歩いて、止まって、振り返って、角度を変えて、すると今までに見えなかった事が徐々に見えてくる。空間の広さは変わらない。けれども、空間をとらえる工夫をし、そこに自分以外の視点をもってくることによって、新たな視点も生まれる。で、見事生まれました。おぎゃあとは言わないけれど。あとは、一つの変化を全体への変化としてゆくために精査してゆき、形にすることを目指す。

今回のARTS&CRAFT静岡の出展者の方の中には、3月11日の震災のダメージを受けた方が何人かいた。当事者から話を聞いたり、またそうしたつくり手をつくり手の仲間として気遣う声を聞き、大丈夫だと思った。その大丈夫は漠然としているけれども、起きた出来事を忘れない事と、少し先の未来へむかって歩き続ける事、人は大丈夫と思えるはず。

最後に、
ものの背景に人がいるかぎり、ものと人は繋がれるし、ものを介して人は言葉以上のものを受け取り贈る事ができる。私たちスタッフはそんな可能性のある場所の芽を育む意識をもって真剣に楽しみながら継続してゆきます。ご参加頂き、またご来場いただき有難う御座いました。


名倉哲
mail : shizuoka@tezukuriichi.com
twitter : https://twitter.com/#!/a_c_shizuoka





静岡放送「イヴニングeye」の放送について

本日10月12日放送された静岡放送・テレビ番組「イブニングeye」内にて
ARTS&CRAFT静岡が紹介されました。

番組をご覧になっていただいた皆様有難うございました。
ARTS&CRAFT静岡より番組をご覧になってくださった皆様へ
お知らせが御座います。

放送の際にお知らせされることになっていた
「ARTS&CRAFT静岡では来場者専用の駐車場がない」旨について
「イヴニングeye」番組制作サイドによって放送がされませんでした。

ARTS&CRAFT静岡の会場である静岡県護国神社では
ARTS&CRAFT静岡来場者の駐車場のご用意はなく、
また会場近辺にもコインパーキングなども御座いません。
東静岡駅または静岡駅などの周辺コインパーキングをご利用ください。

会場周辺は、近隣にお住まいの方の生活道路となっておりますので
ご理解とご協力をお願いいたします。

ARTS&CRAFT静岡
mail : shizuoka@tezukuriichi.com
twitter : https://twitter.com/#!/a_c_shizuoka





2011秋季ARTS&CRAFT静岡を終えて 後編

「2011秋季ARTS&CRAFT静岡を終えて」
前編から後編へ。

10月9日丑三つ時、起床、目がさえ、気分はとてもクリア。そのまま夜間警備の護国神社へ。
神社へ到着するとそこは闇。うっすら出展者の方の頑丈に縛られたテントが見える。
参道を等間隔で歩く夜間警備のスタッフ。赤色灯のあかりが会場をダンスするように動く。
受付には、誘導棒とライトを携え待機するもうひとりのスタッフ。
彼らは日中の開催時に会場には現れない助っ人のようなものであるけれど、開催時には見えない存在に私たちスタッフは助けられているし、彼らがいるからこそ私たちは安心して休む事が出来る。それはスタッフ全員に知っていてもらいたい事であり、知らず知らず私たちは彼らにバトンを渡し、朝また受け取る。これは見えないリレー。
彼らには声をかけず、自分も参道から本殿、契約駐車場の方へ歩いてみる。
虫の声しか聞こえない静寂の中、砂利道のざくざくという足音だけが響く。前方には小さく光るビー玉がふたつ。いつもの人懐っこいノラの目だった。このノラだけは昼も夜も関係なく足元をすりすりしてくる。まあそれはどうでもいいこと。
夜も明ける頃、本殿の御開帳が始まった。夜間警備のもうひとつの目的は、この御開帳の時をこの目で確かめるつもりであったが、受付で作業をしていて、それには間に合わなかった。残念。
6時ちょっと前、夜間警備のスタッフたちと引き継ぎをし、彼らに夜の様子を確認。何事もない事が当たり前でも、彼らがその当たり前の状況をつくってくれることに変わりはない。夜間警備をしてくれる事に感謝しつつ、朝食を渡す。彼らの朝食もサンドイッチ。皆同じ。
やがて、スタッフたちがちらほらやってきて、「おはようさん」と声をかける。
自然とトイレ掃除に向かう人間、今日の確認をする人間、新人スタッフと以前からいるスタッフの会話、それぞれがまだはじまりの前の時間に確認する事を自分で考えて質問してくる。
二日目、朝恒例のラジオ体操がはじまった。これは近所の方が護国神社の鳥居前でやっているようで、大抵スタッフの数名はなんとなく参加し、いつの間にかしっかりとラジオ体操をしている。これはこれでなかなか良い光景。



6時ちょっと、改めてスタッフが全員集合し、昨日の反省や今日やるべき事を話し合う。
やるべきことに変化はないが、今回初めて参加するスタッフにとって確認する事で示しあうことがある。頭の中で考えている事、気がついた事、それを言葉で吐き出すことで頭の中がクリアになり、それが伝える事の第一歩のように思う。濁った頭では伝わるものも伝わらない。
7時、出展者の方が少しずつ搬入にやってくる。皆さん、今日もやるぞ、という表情をしている。
そんな表情を見ると私たちも、今日もやりますよ、と気が引き締まる。
9時少し前、すでに会場にはお客さんがちらほらと来場。
9時スタート、最終日がはじまる。始まりの合図はないけれども、自分の中で9時になるとスイッチが入る。
この日、初参加のスタッフは昨日一日経験している。仮にスタッフとして0.75人前だとしよう。それでも一人前としてやってもらう。そこは待ってられないし、自ら一人前へ歩むしかない。
通常のローテーションを組む。それぞれが開催中の持ち場を一人で担当し、前後〜全体と連絡を取り合いながら進める。新人扱いできない理由、今日という日が終われば次は半年後になってしまうから。今日できなければ半年後はおそらくできない。スタッフ同士助け合う事は大事だが、いち個人として役目をまっとうしなければ助けてもらうことはあっても、お互いに助け合う事はできない。
「STAFF」という腕章は吹けば飛ぶようなぺらぺらなものだが、実際の中身はそんなに軽いものでもない。それを体感し、共有できるのがスタッフとしての醍醐味と思う。スタッフとして・・・そんな事ばかり書いてきたけれども、この日印象に残った事をいくつか。

とある漆の椀物をつくる作家さんはこんな事を言っていた。
「自分のつくるものは一代限りでいいし、陶器のようにいつまでも残るものではない。けれども、自分が作るものはすべて土に還る。」
この言葉にこの人の本心をみたような気がしたし、それが彼のつくり手としての本質のような気がした。それはたかが言葉であるかもしれない、けれどもその言葉には大袈裟なようだが魂が込められているような気がした。それはとても自然に出てきた言葉のようだったから。

毎回出展してくださっている珈琲屋さんをのぞいてみていいなあと思った事がある。
それは時間帯によってブレンドの種類がちがうこと。常になんでも提供するではなく、選ぶこと、制限する事で自分ができうる最大限のサービスをしようとしている証と思った。その看板にはそんな事を感じさせる言葉は書いていないし、あくまでもふつうの手書きの看板だけれど、ふつうで相対する人間に伝わるならふつうでいいじゃない、と感じた。珈琲で伝わる事は味や香りだけではない、景色やどこかの記憶のイメージもある、と。
 
とある器の作家さんをのぞいてみて感じたこと。
彼は第1回目から益子から参加してくださっていて、今回の器とその見せ方に大きな変化があった。
益子と言えば民芸で、彼も窯元で修業をしていたのだろうけれど、それまで幅広く見せていた作品群がかなり集約され、そして今までにない刷毛目と釉の力強さを感じられた。あとから人に聞いたことであるけれど、今までにやってきた沢山の事を絞り、自分の中でこれだ!!と感じた事を感じるままにつくり、やってきたようだった。それは当り前のようだけれども、きっとそこに至る前の過程にいくつものブレ?があったからこそだし、彼の土は彼自身の肥やしになっているのだろうと思う。そして見せ方の変化も当然作品を絞る事によって自然に変化していったのだろう。部分が全体に、全体が部分に、そんなことを考えた。

最後に印刷物の工程でうまれた端材(廃材)をつかって作品をつくる作家さんのこと。
一見シンプルでデザイン性に優れた作品に見えるし、それはその通りなんだろうけれど、そこには既に在るものから新しいものを生み出すための情熱や探求心があり、でも行き過ぎない制限を自身にかけているのが窺えた。つくり手というのはすべてそうしたものであると承知しているつもりでも、物をつくらない私は目の前にいるつくり手の作品を見て、話を聞いてみる事によって改めて再確認させてもらう。目に見える形をつくっているのは間違いない。でもそこには見えない何かがあって、それがつくり手にとっての言葉ではない気概のようなものだろうと思う。自然とこうなりました、はあり得ない。その過程を見ようとする事が、作らない人間にとってのつくることとむきあう姿勢と思う。そんな事を教えられる。

10時ころから多くの来場者でにぎわい、それにほっとしつつ、動き回るスタッフを尻目に、昼過ぎから私ともう一人のスタッフはフードエリア周辺の改善点を確認しあう。
全体の景色をひいて、せまって、歩いて、止まって、振り返って、角度を変えて、すると今までに見えなかった事が徐々に見えてくる。空間の広さは変わらない。けれども、空間をとらえる工夫をし、そこに自分以外の視点をもってくることによって、新たな視点も生まれる。で、見事生まれました。おぎゃあとは言わないけれど。あとは、一つの変化を全体への変化としてゆくために精査してゆき、形にすることを目指す。

今回のARTS&CRAFT静岡の出展者の方の中には、3月11日の震災のダメージを受けた方が何人かいた。当事者から話を聞いたり、またそうしたつくり手をつくり手の仲間として気遣う声を聞き、大丈夫だと思った。その大丈夫は漠然としているけれども、起きた出来事を忘れない事と、少し先の未来へむかって歩き続ける事、人は大丈夫と思えるはず。

最後に、
ものの背景に人がいるかぎり、ものと人は繋がれるし、ものを介して人は言葉以上のものを受け取り贈る事ができる。私たちスタッフはそんな可能性のある場所の芽を育む意識をもって真剣に楽しみながら継続してゆきます。ご参加頂き、またご来場いただき有難う御座いました。


名倉哲
mail : shizuoka@tezukuriichi.com
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